FC東京MF久保建英(17)が「1・08秒」に力を集約させた。アウェー浦和戦に後半17分から出場。中盤からの絶妙なスルーパスで、先制点を演出。押され気味だった展開を打開し、ジョーカーとしての役割を果たした。追い付かれ1-1で引き分けたが、A代表入りも期待される逸材が、チームの鬼門である敵地の試合で輝きを放った。

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途中出場の17歳、東京の久保が1本のパスでゴールをこじ開けた。中盤で浮いたルーズボールに反応すると、左サイドから追い抜いていくMF東へ左足ダイレクトでスルーパス。これを東がクロスでつなげ、FWディエゴ・オリベイラが頭で合わせて決めた。東京五輪世代のU-22(22歳以下)日本代表としてミャンマー遠征に参加し、帰国から中2日。この日はいつもの右サイドでなく2トップの一角として、ジョーカー起用に応えた。「ゴールに直結するプレーができたことはよかった」と話した。

瞬時の判断だった。1度中盤からディエゴ・オリベイラに出したパスが合わず、浮いたボールが後方へ弾む。ゴールに背を向けた状態で、選択肢はトラップ、ヘディング、パスの3つ。「自分の体格では、頭は届かない」。落下点には一番乗りしたが、至近距離には前後と左から相手が3人。トラップすれば反則覚悟でつぶされる可能性が高かった。そこに「誰かは分からなかったけど(味方が)見えた」と、追い越していく東を視界の右隅に捉えた。ボールが弾んでから足元にくるまで、わずか1・08秒。状況を把握し切った。

選んだパスは絶妙だった。後ろ向きの状態から振り向きざまに、ボールの落ち際に左インサイドで丁寧に合わせて無人のスペースへ。東のスピードにぴったりと合わせてみせた。広い視野と判断力、そして描いたイメージを現実にするだけの技術が凝縮されていた。17歳は「自分のパスよりも、東選手の(アシストの)パスがよかった」と、淡々と振り返るだけだった。

03年7月以来2分け12敗のアウェー浦和戦。追い付かれ引き分けたが、久保のプレーを長谷川監督も「すばらしい仕事をしてくれた」とたたえた。五輪世代の先にあるA代表に値する存在であることを示した1・08秒だった。【岡崎悠利】