鹿島アントラーズの日本代表FW上田綺世(20)がプロ初ゴールでチームを2位に押し上げた。

後半28分に途中出場すると裏へ抜ける動きで横浜のDFラインをかき回し、同42分に右足で決勝点を決めた。東京五輪世代のエース候補が、地元でもある本拠地デビュー戦で大仕事をやってのけた。

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鹿島に地元出身のニューヒーローが誕生した。1-1の後半42分、MF三竿のフィードをゴール前のMF土居が頭で落とした。中央に走り込んだ上田は、バックステップで相手DFをはがしてスペースを作ると、すばやく右足を振り抜いた。本拠地デビュー戦で鮮烈なゴールを決め、ヒーローインタビューでは「気持ちよかったです」と笑みをこぼした。

6月の南米選手権で日本代表に選出され、今夏鳴り物入りでプロ入りしたが、順風満帆とはいえないサッカー人生を送ってきた。中学3年間を鹿島下部組織で過ごすも、ユースに昇格できず鹿島学園に進学。卒業後は法大に入ってプロを目指し、「(鹿島に)呼ばせてやる」と奮起した。

2年生だった今年2月に鹿島内定を勝ち取り、今夏それを前倒しする形で満を持してカムバック。わずか3戦目での初ゴールも「どんなゴールでも1点の重みは変わらない」と、反骨心ではい上がってきた20歳に浮かれた様子はない。

それでも、中学時代はスタンドで観戦していた身。「憧れの雰囲気だった」というピッチに立った感想を問われると、「ずっと上から見ている立場だった。自分がその中にいる存在になれた達成感がある。逆になってすごく感動もある」と話した。同時に「今そうしている子どもたちに『ここまで来られるぞ』と証明していきたい」とも。根性でプロ入りを勝ち取ったシンデレラストーリーは、地元の子どもたちの励みになるはずだ。

この勝利で勝ち点を41に伸ばした鹿島は2位に浮上。首位東京との勝ち点差7を埋めるべく落とせない試合が続く。上田は「流れに乗っていければ」とゴール量産を宣言。地元が生んだ20歳の新星が、鹿島を押し上げていく。【杉山理紗】

 

◆上田綺世(うえだ・あやせ)1998年(平10)8月28日、水戸市生まれ。中学時代は鹿島アントラーズノルテに所属。鹿島学園高を経て法大に進学。50メートル走6秒0の俊足を生かし、1年生から試合出場。18年の全日本大学サッカー選手権優勝に貢献した。17年にU-20代表に初選出され、以降、東京五輪世代の代表に名を連ねる。19年5月に南米選手権に参加する日本代表メンバー入りし、A代表初選出。6月18日のチリ戦で初出場。国際Aマッチ3試合0得点。180センチ、72キロ。