全国高校サッカー選手権が30日から開幕する。令和の初代王者を決める今大会。日刊スポーツでは「新時代 令和の初代王者へ」と題して開幕までは独特の強化法で勝ち上がった3校を取り上げて連載する。

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興国(大阪)・内野智章監督(40)は「プロになるなら興国へ」を公然と掲げる、異質な指導者だ。就任は14年目だが実際は最近8年間だけでプロ14人を輩出。7年前に卒業したJリーグヴィッセル神戸のFW古橋は今年日本代表入りしてブレーク。現3年の主将MF田路、DF高安はJ2金沢へ。2年のGK田川、MF樺山は年明けにJリーグ強化指定選手となる。他の選手も含めて「今メンバーでは最多で7人がプロに行く」と説明する。

高校生活で徹底して技術を教え込む。ドリブル専門のコーチを招いたり、大きさの異なるボールを蹴らせたり。脳への刺激を与えることで習得を早めさせる。「全員がプロになれるわけではないが、1度身につけた技術は老後まで使える。行き着いたのは技術重視のエンジョイ・フットボール」。その考えを「興国メソッド」と呼び、ただ走るだけの練習メニューはない。

私立の興国ではバルセロナなどへの研修旅行で名門クラブと対戦する。U-17日本代表の樺山は「プロに一番の近道だと思って入学した。やっていて楽しい」と話す。

「高校選手権は通過点であり、最終ゴールではない。だから選手がJリーグの練習にも呼ばれたら行かせる。Jクラブと高体連のいいところを取り、オンリーワンのチームを目指していく」。内野監督は初芝橋本(和歌山)1年時に2学年上の吉原宏太(元日本代表FW)らと全国4強に入った。だから選手権の魅力も理解する。「興国にとって初出場初優勝は1度だけの好機。狙わない手はない」。

「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのこと」。物理学者アインシュタインの言葉が座右の銘。「見る立場が変われば常識が非常識になる。どんな指導者と出会っても、選手には応用できるサッカーの考え方を教えてあげたい」。アヤックスやバルセロナを率いたクライフ監督を信奉する、新タイプの指導者が全国デビューを果たす。【横田和幸】

◆内野智章(うちの・ともあき)1979年(昭54)5月31日、堺市生まれ。初芝橋本、高知大、当時JFLの愛媛などを経て06年興国監督就任。家族は夫人と2男。趣味は車。