2大会連続3度目の準々決勝に臨んだ帝京長岡が、県高校サッカーの歴史を塗り替えた。仙台育英(宮城)に1-0で勝ち、県史上初の4強入りを決めた。

キックオフ直後の前半1分、FW晴山岬(3年)の左クロスにMF谷内田哲平(3年)が中央に走り込み、電光石火のゴール。立ち上がりの得点が決勝点となった。青森山田との準決勝は11日、埼玉スタジアムで行われる。

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県高校サッカー史の新しい扉をこじ開けたのはMF谷内田の右足だった。キックオフ直後の1分。FW晴山がラインぎりぎりから送り込んだ左クロスに、スペースに走り込んで合わせた。「(晴山)岬が振り向いた瞬間、感覚的に(ボールが)来るとわかった」。仙台育英GK佐藤文太(3年)が、ほとんど反応できずに見送った右足シュートは、ゴール右隅に飛び込んでいった。

古沢徹監督(34)は「やってくれるだろうと思っていた。勝負を決める選手なので…」と谷内田を評した。3回戦(3日、対神戸弘陵)ではサッカー人生で初のハーフタイム交代を経験。悔しい思いを味わっていた。準々決勝で決意していたのは「結果を残すしかない」の1点だった。そして、結果を残した。決勝ゴール。県内でどの学校も到達できなかった初の4強。有言実行のMFだ。

84年度は新潟工が、17年度は日本文理が…。12年度、18年度の帝京長岡の先輩たちが、どうしても越えられなかった分厚く高い8強の壁をあっさりと破り、軽々と越えた。谷内田がJ2京都パープルサンガ、晴山がJ2FC町田ゼルビア、DF吉田晴稀(3年)がJ2愛媛FCとJクラブ内定者を3人もそろえる最強世代はその先を見据える。「(4強で新潟県の)歴史を変えられたのは素晴らしいけれど、目標は日本一ですから」と谷内田は言う。「日本一」という言葉が素直に出るところが、今年の帝京長岡の強さだ。

前回大会の準々決勝を2年生で先発出場したのは、谷内田を含めて6人。その経験が生きた。尚志(福島)に0-1で敗れたが、古沢監督は「前回の準々決勝は立ち上がりはフワッと入ってしまった」と振り返る。開始1分で勝負をつけた今回は、前回と正反対だ。4強が決まった瞬間、選手たちに派手なガッツポーズはなかった。「ゲーム内容があまり良くなかったから」と谷内田は言う。選手の気持ちはすでに準決勝の勝利へと向いている。県史上初の4強を「過去の栄光」にするための準備はもう始まっている。【涌井幹雄】

◆谷内田哲平(やちだ・てっぺい)2001年(平13)11月1日、新潟県長岡市生まれ。長岡JYFC出身。前回大会は2得点。18年全日本U-18フットサル選手権優勝メンバー。好きな選手はイニエスタ(J1神戸)。170センチ、65キロ。血液型B。