J1から数えれば5部相当-。大阪・枚方市に拠点を置く関西リーグ1部のFCティアモ枚方には、仕事をしながらプレーを続ける2人の元日本代表がいる。クラブには元Jリーガーが13人在籍。今季から指揮を執るのは名古屋グランパスで10番を背負った小川佳純監督(35)で、ヴィッセル神戸などで活躍したMF田中英雄(37)が主将を務める。社会人チームのため、練習後は全員がそれぞれの勤務地へと向かう。

汗だくで取材に応じてくれたのは、06年に日本代表入りしたMF野沢拓也(38)だ。Jリーグでは鹿島アントラーズ、神戸、ベガルタ仙台で活躍。昨年から枚方に加わった。加入のきっかけを問うと「地域リーグで上に上がるしかないところの方が、やりがいがある」と明かした。

Jリーガー時代は多くを語らず、記者泣かせな選手だったという。仕事はアサンプション国際中学校・高等学校(大阪)のコーチ。練習メニューを立て、教え子1人1人に目を配り、四六時中考えを巡らしている。教育の場であるため、サッカーだけを教えればいいというわけではない。

「親みたいな気分ですね。あいさつとか自分がしてこなかったことを教えているので自分も成長している感じ。(プロでは)こんなに考えることはなかった。疲れますけど、『疲れるのが仕事でしょ』っていう感覚ですね」と充実感をにじませた。

ガンバ大阪で03年から16年途中まで10番を背負ったMF二川孝広(40)は、同クラブの育成コーチをしている。枚方に来たのは、地元大阪で選手を続けながら指導者の道を歩みたいと思ったからだ。G大阪時代は口下手で有名だったベテランは、今でも大勢の前で話すことは苦手だ。「(小中学生の大勢を集め)円になって、何かを語るところまではできていないです。周りのコーチを参考にしながらやっていきたい」と奮闘している。

年齢を重ね、華やかな舞台から離れてもなおボールを追い続けている。ともに、プレーでJ1の大観衆を沸かせた日本を代表する選手だった。野沢は言う。

「教えている子が、何年後かにはプロになって、もしかしたら同じチームでできるかも知れない。自分がそこまで(現役を)やっているかはわからないけど、そういうのも味わえますし、面白いですよね」

まだ現役。果てしない夢がある。【南谷竜則】