「フーテンのカズ」が、J3を目指して全国を行脚する。JFLの鈴鹿ポイントゲッターズに移籍したFWカズ(三浦知良)が26日、55歳の誕生日を迎えた。

この日チームとともに鈴鹿市内での合宿を打ち上げて、同市内で恒例の誕生パーティーを開催。映画「男はつらいよ」の車寅次郎に扮(ふん)し、新天地で迎えるプロ37年目のシーズンへ意欲をみせた。

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なじみのテーマ曲が流れる中、カズが登場した。帽子に雪駄(せった)、左手にカバン、右手に上着の姿は、まるで寅さん。「完全にフーテンのカズ。説明はいらないですよね」と、照れながら話した。

毎年、2月26日には数十万円の色変わり「誕生日スーツ」で現れるのが恒例。今年も「みなさんの期待に応えたい一心でした」。チェック柄のスーツは生地から特注。腹巻きは柴又で買った。「今年もいつもくらいは、かかっている」と話した。

もともと「男はつらいよ」が大好き。「旅先で出会う人を上とか下に見ない。そういうスタンスにひかれる」。クラブを渡り歩く自分と重ねる。鈴鹿合流初日にも三重の印象を「寅さんが伊勢神宮に来ていた。僕もふらふらしたい」と言った。

寅さんを支えたのは、家族の存在。カズも「息子2人はサッカーを続けてほしいと思っているから、どこにいっても、どこでプレーしても、応援してくれる。かみさん(りさ子夫人)には『まだやるの?』って言われましたけど」と笑った。

大都市を回ってきたカズにとって、鈴鹿は初の地方都市。JFLではこれまで試合をしたことのない町にも行く。「いろいろなところに行くのは楽しみ。情熱とパワーでみんなに喜んでもらうことが、JFLの盛り上がりにつながれば」と、全国行脚を心待ちにした。

合宿中の練習試合は、3日連続先発出場。3月13日の開幕スタメンへ、調子を上げてきた。この日朝には、選手全員からケーキで祝われるなど、チームにも溶け込む。報道陣にどら焼きを配って「達者でな」の言葉を残した「フーテンのカズ」が、J3昇格を目指してJFLでの戦いという旅に出る。【荻島弘一】

◆カズの誕生日 誕生日イベントでのファッションが注目されたのは47歳の14年から。毎年、色の異なるスーツを披露し、同年は白、15年は赤、16年は青。50歳の17年は、誕生日がリーグ戦の開幕日と重なり、試合後、ピンクのスーツで会見に臨んだ(カズは先発しチームは松本に1-0で勝利)。18年は黄色、19年は再び白に戻ったが、14年のダブルとは別ものでスリーピースだった。21年はオンライン上で行われ、タキシード姿で登場。同じ誕生日のサザンオールスターズの桑田佳祐になりきり、自らバースデーソングを熱唱した

◆J3へ昇格(入会)するには (1)Jリーグ百年構想クラブに認定、(2)J3ライセンスを交付、(3)Jリーグ理事会で入会を承認、(4)JFLでの競技成績を満たすこと。JFLの最終順位が4位以内で、かつJFLに属する百年構想クラブのうち、上位2クラブに入っていることが要件になる。

◆JFL(日本フットボールリーグ) アマチュアチームを含む唯一の全国リーグで、Jリーグと各地域リーグの中間に位置する。今季は3月13日に開幕、16チームが11月20日まで2回戦総当たりで対戦する。J3ライセンスを持つ百年構想クラブが上位に入れば、条件を満たしてJ3昇格が決まる。Jクラブは現在J1からJ3まで58。不在県は7あるが、福井と和歌山を除く5県のクラブがJFLに所属する。

〇…鈴鹿加入後初の合宿を終えたカズは「コミュニケーションもとれて、チームでの自分の存在感や立ち位置が分かってきた」と話した。合宿に参加した武田修宏特別コーチは「最初、若手はカズさんに近寄りがたい感じだったけれど、いい雰囲気になってきた」。W杯カタール大会に出場するセルビア代表のコーチで、カズのために合宿に駆け付けた喜熨斗(きのし)勝史氏も「1人でチームを劇的に変えることはできないけれど、カズ加入は間違いなくチームにとってプラス」と言った。兄の三浦泰年監督も「状態は上がってきている。チームにもフィットしてきた」と手ごたえを口にしていた。