今季昇格したいわきFCは1-0でSC相模原に勝ち、Jリーグでの初勝利を挙げた。

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村主博正監督(45)は、古い写真を取り出した。試合前のミーティング。そこには、Jヴィレッジスタジアムが映されていた。サッカースタジアムのはずだが、プレハブが建っていた。震災当時は、福島第1原発事故の最前線基地だった。その地で迎えたホーム開幕戦。「サッカーが日常になること、こういう中で開幕を迎えることに感謝しよう」と選手を送り出した。

16年に福島県2部リーグからスタートしたクラブ。わずか6年でJ3までやって来た。昨季までのJFL時代は何度もプレーしたこのスタジアムも、Jリーグでは初の舞台だった。MF鈴木翔大は「歴史的な瞬間をつくりたいと思っていた」。思いをプレーで体現した。0-0の後半30分。左サイドから中央へのクロスの流れで、左足で豪快に決勝点をぶち込んだ。

16日深夜には宮城、福島の両県で震度6強を観測した地震が発生。復興は半ば。村主監督は「まだ新幹線が止まっている。停電しているところこもあり、元通りの生活ができていない中、我々は目いっぱい、サッカーで勇気、感動を伝えるしかない」。目を真っ赤にして、J3初勝利、ホーム開幕戦勝利をかみしめた。この地から、数多くのドラマを届ける。【栗田尚樹】