北海道コンサドーレ札幌の杉浦大輔コーチ(47)が、7日京都戦(札幌ドーム)でJ1通算500試合指揮を達成するペトロビッチ監督(64)の素顔を語った。広島、浦和時代から通訳兼任として務めて17年目。最も近くで仕事ぶりを見てきた右腕が、歩みを振り返った。【取材・構成=保坂果那】

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06年夏、ペトロビッチ氏が広島の監督に就任。当時ドイツのケルン体育大に通っていた杉浦コーチが通訳を務めることになった。11年まで同クラブ、12年から浦和、18年から札幌でサポートし続ける。J1通算500試合達成を迎えるペトロビッチ監督の、熱意と仕事への責任感を知っている。

杉浦コーチ まずすごいのは、毎週、毎試合、必ずいること。意外と健康に気を使っていることが身近でよくわかる。血圧が高いけど、抑える薬を毎日飲み、奥さんが健康管理していて、いろんなビタミン剤を飲んでいる。広島時代のオフに股関節の手術をした時も、普通なら片足ずつだけど「時間がないから」と、一気に両足。本当はもっと入院しないといけないけど、松葉づえ姿で空港に到着した。昨年、大腿(だいたい)骨の骨折もあったが、開幕1週間前には日本に戻って来られるように間に合わせた。

ともに過ごし17年目、戦術面で変わった部分、変わらない部分がある。その積み重ねが500試合となる。

杉浦コーチ 基本的なコンセプトは変わらないけど、守備は昔は前線3人はそんなにしなくていいというスタンスだった。守備にエネルギーを使い過ぎて攻撃の時にパワーを出せなくなるから、と。今は前線が守備の最初だと言って、守備を求める。けどサッカーの美学は変わらない。自分のチームは攻撃的で魅力的なプレーをするチームであり、その上で勝利を目指すという思い。

1日に亡くなった恩師のオシム氏は「オシム語録」と呼ばれる独特な言い回しをした。28年の付き合いがある同監督も「その場で聞いてもわからないことが多い」と話す。ただ「ミシャ語録」もたくさんある。癖のある例え話を選手にすることがあるという。

杉浦コーチ 「バケツに入ったミルクをひっくり返した」と選手に話したことがある。せっかくみんなで乳搾りしてバケツいっぱいになったミルクを、お前の1つのミスで台無しにしたという意味。あとはポジティブな考え方を求める時に、頭の中に2匹のオオカミがいる話をする。1匹は前向きな思考、もう1匹は後ろ向きな思考をエサにする。ネガティブだとそちらのオオカミがどんどんエサを食べて強くなり、ネガティブなことしか考えられなくなるよという例え。監督はいろんなことを想定しなければならないので、時にはネガティブな思考と戦わなければならないことが多いと思う。だからそう言うのかもしれない。

Jリーグ史に新たな記録が刻まれる京都戦。愛煙家のボスのために、常に予備のタバコをかばんや車内に用意している同コーチも、ベンチでともに戦う。