アルビレックス新潟はFC町田ゼルビアを2-1で破り、ホームでの今季最終戦を白星、J2通算200勝で締めた。試合後にはDF堀米悠斗主将(28)が高々と優勝シャーレを掲げ、スタジアムに駆けつけたホームの大サポーターと03年以来2度目のJ2制覇を喜び合った。試合はプロ2年目のMF三戸舜介(20)が前半13分に先制、1-1の後半38分には勝ち越しと2ゴールを決める活躍を見せた。25勝9分け8敗、勝ち点84の成績を残し、来季は6年ぶりにJ1で戦う。

チームの将来を担う“次世代スター”が最終戦勝利の立役者となった。前半13分に先制点を挙げた三戸は1-1の後半38分、FW鈴木とワンツーで右サイドを抜け出し、最後は飛び出した相手GKをかわすようにチップキックでネット揺らした。決勝点となる今季6得点はチームのJ2通算200勝到達のおまけ付き。ゴール後は次々と看板を跳び越え、ホームの大サポーターのもとへと走った。「ずっとやってみたかった。気持ちよかった」。

勝利で締め、気持ち良さは全員同じだ。主将のDF堀米は試合後のセレモニーで優勝シャーレを高く掲げた。「たくさんの人の思いが詰まっていた。我慢していたお酒がやっと飲める」と笑い、優勝監督インタビューで「新潟、チョー最高~!」と叫んだ松橋監督には「リキさん(松橋監督)のはじけた笑顔を見ることが出来てうれしい。5日間のオフぐらいはゆっくりしてほしい」と就任1年目でJ2優勝とJ1復帰に導いた指揮官を思いやった。

横浜のコーチとし19年のJ1制覇を経験した松橋監督の練習は常に「J1基準」だった。パスは強弱だけでなく数センチ単位でこだわった。相手がどんなに密集していても「出し手と受け手のタイミングさえ合えばパスは通る」と繰り返し、狭いエリアをパス交換でこじ開ける力を身につけてた。

アルベルト前監督(現J1東京)が種をまいたポゼッションサッカーが就任2年間で徐々に芽を出し、今季から引き継いだ松橋監督がそこに「縦への意識」という“肥料”を加え、トータル3年できれいな花を咲かせた。ボール支配率を上げるスタイルはもちろん「ゴールを奪うためのもの」。ポジションは関係なく、全選手の意識の優先順位は<1>ゴール<2>ゴールに近い味方<3>近くの味方。ゴールに迫る回数を多くし、今季リーグ最多73得点を奪った。

ボールポゼッションを高めることは守備にも生きる。35失点は徳島と並びリーグ最少失点で、18試合を完封(17勝1分け)につなげた。DF千葉は「ボールを保持しながら守備陣は立ち位置を修正できる。接戦をものにする力もついている」と話す。伝統である球際の激しさ、攻守の切り替えの速さを土台に「J1基準」で作り上げたサッカーでJ1の舞台に戻る。

全日程が終了したチームはしばらく練習を続け、練習試合を組むことも検討している。選手たちの目線はもう来季に向く。MF島田は「今やっているサッカーの質をさらに上げていきたい」。来季で38歳となるDF千葉も「J1チームは勝ち点3が取れるチーム(新潟)が上がってきたと思っているはず。それを見返したい」と力を込める。新潟はアップデートを繰り返しながらJ1定着、そしてタイトル獲得を目指す。【小林忠】