日体大柏(千葉)が、芦屋学園(兵庫)との初出場対決を制し、全国1勝を挙げ、天国の工藤壮人さんに白星を届けた。

日体大柏は、柏レイソルと相互支援契約を結び、根引謙介監督と菅沼実コーチは柏のアカデミーからの派遣だ。アカデミーの選手も日体大柏に通っており、10月に32歳の若さで急逝した工藤さんは、日体大柏のOB(所属は柏ユース)でもある。工藤さんは、所属チームがなかった20年、日体大柏で練習参加。現在の3年生は、工藤さんと同じピッチで練習しFWの心得やプロとしてあるべき姿を選手に伝えていた。ベンチには工藤さんのレイソル時代の「背番号9」のユニホームが飾られ、先制点を決めると、イレブンが工藤さんのユニホームを掲げた。

後半11分、ペナルティーエリア内で縦パスを受け、反転して左足シュートを決めたMF吉田真翔主将(3年)も、工藤さんの「FW塾」を受けた1人だ。吉田は「FWの動きだし、得点の取り方と、FWの部分をマンツーマンも含め、深く教えていただいた」。

常に言われていたことは「シュートはコース」。得点シーンは、GKが届かないゴール左端へパスするような感覚で流し込んだ。吉田は「教えられた部分が生かせられた。決定力の部分は工藤さん、菅沼コーチの力が大きい」と胸を張った。

全国大会前は、天然芝に慣れるため、柏のトップチームが使用する日立台の練習場も使用。この日も柏の瀧川龍一郎社長、布部陽功GMもスタンドに駆けつけていた。クラブの後押しも受け、柏OBの根引監督がしっかり、結果で恩返しをして見せた。

工藤さんのユニホームは家族から借りた。根引監督は「半年近くグラウンドで一緒に練習していた。彼の振る舞い1つ1つが、今のサッカー部にいい刺激になっていた。ぜひ、一緒に戦わせてもらいたかったので、お借りして。1勝できましたが、彼は“まだ次だぞ”と言うと思います」。そう語った目は潤んでいた。

柏との相互支援契約8年目でつかんだ全国切符。記念すべき全国1勝を日体大柏の歴史に刻んだ。根引監督は「初戦を勝ったことで、新しい扉を開くことができた。1つずつ勝利することで、新しい景色を見られると思う」。31日の2回戦では、夏の全国高校総体ベスト16の丸岡(福井)と対戦する。工藤さんと戦う全国大会は、まだ続く。【岩田千代巳】

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