再起への1歩を踏み出した。J1東京から加入したJ2ベガルタ仙台GK林彰洋(35)が、FC町田ゼルビアとの開幕戦で3年ぶりの公式戦出場を果たし、復活を印象づけた。再三のピンチにも冷静に対応。90分間を無失点に抑え、0-0の引き分けに貢献し勝ち点「1」を呼び込んだ。20年に右ひざに大ケガを負い、直近2年間は表舞台から遠ざかっていた。かつては海外、日本代表でもプレーしたベテランGKが仙台のユニホームに袖を通し、ピッチに帰ってきた。

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なつかしい感覚が脳裏によみがえった。林は試合後、仙台サポーターに手を振りながら、こみ上げてくる感情を抑えていた。

「(試合中は)あまり感情的にならないように試合に集中していたが、サポーターの姿が目に入ると、この2年間の思いとか…。感情的にこみ上げるものがありました」

この2年、苦しい時間を過ごした。前所属の東京では21、22年と表舞台から姿を消した。20年に右ひざ前十字靱帯(じんたい)、外側半月板を損傷する大けがを負い、治療とリハビリに時間を費やした。この日が実に3年ぶりの公式戦出場となり“仙台デビュー”を果たした。だが、焦りは皆無。かつて海外、日本代表でもプレーした経験豊富なベテランGKは毅然(きぜん)とした表情でゴール前に立ちはだかった。前半から町田の猛攻に遭い、再三のピンチが訪れたが冷静に対応。ゴールポストに2度救われる“球運”も味方につけ、町田とのアウェー開幕戦をスコアレスドローに持ち込んだ。「正直、勝ち点3が欲しかったですが、後ろの選手として(失点)0に終えることができたことはプラスに考えたい」と前を向いた。

J2降格2年目を迎えた今シーズンは、「J2優勝でJ1昇格」が至上命令。そのためには絶対的な守護神の存在は必要不可欠であり、今後も堅守で勝ち点「3」を積み重ねていくしかない。次節は26日、「ホーム開幕」で栃木を迎え撃つ。林は「サポーターに届けたいのは勝ち点3です」と高らかに宣言した。再起を期す守護神が全身全霊でゴールを死守する。【佐藤究】