サッカー元日本代表監督で、J3FC今治の代表取締役会長を務める岡田武史氏(66=日本協会副会長)が、今度は「高等学校教育」に乗り出す。

19日、都内で会見し、来年4月に「FC今治高等学校 里山校」(愛媛県今治市)を開校して学園長に就任することを発表した。

「また岡田は何を始めたんだ? と思った方もいるかもしれませんが」と笑わせた上で、新型コロナ禍の20年から検討してきた新たなチャレンジを、熟考の末に実行したことを報告。「天の配剤。強いリーダーシップを持ち、この社会にアダプト(適応)する力を持った人材の育成が必要」と強調した。

創設116年の歴史がある今治明徳学園からの申し出を受け、ロールモデルがない中で主体性を持ち、世界の歴史を動かしていくキャプテンシップを持ったリーダー「ヒストリック・キャプテン」の輩出を目指すという。

「ヒストリック・キャプテンとは、歴史に名を残すヒーローではなく、みんなを巻き込んで変えていく人材。大谷翔平選手のようなヒーローではなくても、社会を変えていく人材を育てたい」

そう教育理念を口にした岡田氏は、かねて環境問題や野外教育に熱心。日本を2度のW杯に導いただけでなく、クラブ経営、スタジアム建設、協会副会長、バスケットボールBリーグ理事など活動が多岐にわたる中、ついに全日制の学校を“創立”した。現存している「今治明徳学園 矢田分校」を「FC今治高等学校 里山高」と改称し、実学・実践中心の3年間を用意する。

学校教育に込める思いとしては、よく例示する「遺伝子にスイッチが入った」状態のタフネスさを養うとともに、野外体験や地球環境の多面的な理解、持続可能性の考察力が身につくよう指導。歴史的なキャプテンになるための資質を伸ばすために、午前中は座学、午後はJ3今治のホーム里山スタジアムなどへ出向いての実習などをカリキュラムに組み込み、同本拠を「感情の交換が生まれる学びのフィールドに」として有効活用する。

目玉として、実際に時代を変えてきたエポックメーカーも招請。サイボウズ株式会社の青野慶久社長や元プロ野球選手の古田敦也氏ら、各界の第一人者が年間5、6時間のコマを担当する特別講義も行われる。

さらには「東京芸大の日比野(克彦)学長や陸上の為末大さん、山下泰裕さん(JOCと全日本柔道連盟の会長)ら自分のネットワークを生かして、お手伝いしてもらえれば」と岡田氏。学園長としても、自ら「週に1回くらいは顔を出したい。教職員の皆さんをねぎらうだけでも違う」と約束した。

「キャプテン」の響きで言えば、自身が国内外の監督時代にリーダーシップあふれる主将も育ててきた。将来的には、日本を代表するサッカー選手らレジェンドの特別講師を招いたり、いずれ自ら教壇に立つ機会もあるかもしれない。

全国どこからでも入学可能で、JR今治駅から3分の場所に個室完備の寮も整えた。FC今治を運営する「今治.夢スポーツ」の企業理念「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会づくりに貢献する」人材養成へ。「経営を立て直すだけなら、やる気はなかった。新しい教育。参考にした学校も全くない」と自負する次の挑戦を、もう何個目の肩書なのだろうか、今度は「岡田学園長」として具現化していく。【木下淳】