J3降格圏の21位に沈むモンテディオ山形が、連敗を「8」で止めた。アウェーで3位東京Vを2-1で破り、渡辺晋監督(49)体制4戦目で初勝利、チームとして9試合ぶりに勝ち点3をつかんだ。

前半3分、DF山田拓巳(33)の3年半ぶりのゴールで先制。後半24分にはFW藤本佳希(29)に今季初ゴールが生まれた。その後、PKで1点差に迫られたが、古巣戦でJリーグデビューを果たしたGK長谷川洸(27)を中心にリードを守り抜いた。

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山形が長い長いトンネルから抜けだした。2-1で後半ロスタイムに突入。まさかの「8分」の表示が出たが、リードを保ったままホイッスルが鳴る。試合後、GK長谷川はサポーターに向けて笑顔でサムズアップ。「僕が出たから勝ったとかではないし、みんなが積み上げてきたものがやっと形になり、結果に表れて良かった。ホッとしています」と力を込めた。

渡辺監督は大きな決断をした。今季はGK後藤雅明(28)が全試合で先発してきたが、長谷川を起用。8連敗中で「この悪い流れを断ちきるためにも交代する考え方は必要じゃないか」と判断した。東京Vの下部組織出身で日体大を経て同チーム入りした背番号「16」に、プロ6年目で初出場のチャンスが訪れた。

長谷川は午前6時50分頃に一番乗りでクラブハウスにやってくるのがルーティンだという。「誰よりも早く来て、毎日同じように準備している。そういう選手は必ずチャンスが来るし、チャンスをつかむと思う」と渡辺監督。前日21日に先発を告げたという。

この日は長谷川の母ゆかりさん(52)が観戦。「自分が先発とは言わなかった」とサプライズ演出で親孝行した。指揮官も「間違いなく勝ち点3に大きく貢献してくれた」。長谷川にとって特別な1日になった。「Jリーグデビューは一生に1度。モンテディオでJリーグデビューできてすごくうれしい」と話した。

渡辺監督 とにかくこの喜びの味を選手たちにはかみしめてほしい。長い間、この味を忘れていたし、それを僕らは望んでいながら得られなかった。この味を味わいたいからエネルギーを出すような循環にしたい。とにかく今は今日1日だけは、選手たちには存分に勝利の味を味わってもらい、『これはまた癖になるぜ』と思ってもらいたい。

この1勝をきっかけに山形の逆襲が始まる。【山田愛斗】

山形FW藤本佳希(29、MF田中渉のパスが起点になり決勝弾)「素晴らしいタイミングでいいパスを出してくれたので、欲を言えば1発で決めて(田中に)アシストをつけたかったが、決められて良かった」