<J1:浦和4-2札幌>◇第9節◇29日◇埼玉

 浦和のDF田中マルクス闘莉王(27)が、得点王に名乗りを上げた。29日札幌戦(ホーム)で、チームを勢いづける同点ゴールを決めた。今季5得点目で得点ランクで暫定2位。得点王も狙える位置に来た。チームも2試合連続4得点で勝利を収め、最近7戦で6勝1分けと負けなし。首位名古屋が川崎Fに敗れたため、暫定ながら今季初めて首位に立った。

 闘莉王は相手のマークをものともせず、長髪の頭を突き出した。1-2で迎えた前半28分、MF梅崎の左CKを頭で合わせてゴール。京都戦(26日)に続く連続ゴールを決めるとひざまずき、両こぶしで地面を殴った。「この間はニアだったから、今度はファーで勝負した」。開始早々に先制され、同24分に追いついたと思ったら即座に突き放された。その直後だっただけに、相手の士気をくじく値千金のゴールだった。

 予想される厳しいマークにも対応した。「マークが厳しくてなかなか前を向かせてくれない」。この日も2人のDFにはさまれた。だが、相手GKがロングボールに飛び出してこないと察知すると、キッカーの梅崎に「速いボールじゃなくて、弱いボールでもいいから競れるボールをくれ!」と要求。高いボールであれば勝てる自信があった。

 得点への意識は高まっていた。今夏の欧州選手権ではイタリアに注目し、予選から録画してチェックしていた。「守備だけじゃなくて全体的にみている。強いチームは守備だけじゃないからね」。昨年12月にクラブW杯で対戦したACミランMFピルロの、ボランチで得点力もあるプレーを見てイメージをつくった。

 暫定ながら得点ランク2位。「得点王?

 (オレなんかで)大丈夫かな?

 」と自虐的に笑ったが、獲得すれば6年ぶりの日本人得点王で、J史上初めてDF登録選手の得点王誕生となる。闘莉王も「前に行く気持ちがオレを動かす」と色気を出す。開幕2連敗後は17位にまで落ちたチームが、その後は6勝1分けで暫定首位。闘莉王がいう。「トラブルがあった中で、闘うレッズにしようと意思統一してきた」。確かな手応えをつかんで、王者が貫禄(かんろく)を取り戻した。【栗田成芳】