<J2:湘南3-2水戸>◇最終節◇5日◇Ksスタ

 湘南が、11年ぶりのJ1復帰を果たした。勝てば昇格条件の3位以内が決まる水戸戦で劇的な逆転勝ち。2点を先行されながらも前半30分にFW田原豊(27)が追撃ゴールを決め、同34分と後半8分にFW阿部吉朗(29)が連続得点した。00年にJ2降格して以来、10年のブランクは史上最長。続投が決定的となった反町康治監督(45)の下で来季、「湘南の暴れん坊」が復活する。甲府は熊本に勝ったが、勝ち点1差で4位に終わった。

 反町監督が4度、宙に舞った。「達成」文字入りのTシャツで、選手たちが抱き合った。10年の悲願だけに、生みの苦しみを味わった。前半20、21分に連続失点。しかし、ここから強い精神力を発揮した。前半に2点返すと、後半8分に阿部が頭で勝ち越しゴール。そこには、今季ロスタイムに10得点した「あきらめない湘南」の姿があった。

 甘えを排除した反町監督の勝利だった。就任当初から「選手が倒れても『大丈夫か?』と声を掛けさせなかった」。倒れた選手を無視して、練習を続けた。真剣勝負の積み重ねが、逆境をはね返す力になった。阿部は「監督に恩返しがしたくて(練習でやってきた)すべてをピッチに置いてこようと思った」と話した。

 Jリーグに昇格した94年に天皇杯優勝。98年W杯フランス大会にはMF中田英らを日韓代表4人を輩出するなど、攻撃サッカーで人気チームになった。だが、99年に親会社のフジタが撤退し、翌00年にJ2降格。経営難に苦しみ、チーム消滅の危機もあった。真壁潔社長は「我々は夢や希望を売る商売。『身の丈経営』を言い訳にしてはいけない」。やれることは何でもやった。10年間、夢をあきらめることはなかった。

 反町監督との契約は今季いっぱいだが、延長のオファーは出ている。交渉はこれからだが、同監督も前向き。チームと町があきらめなかった夢を1年でかなえた指揮官は「(J1の)胃液が出そうな生活を送るかと思うと…うれしいような悲しいような」と、来季をにらんで話した。【山田大介】