10歳でスペインへ渡った日本のサッカー少年が、夢のスペインリーガーへの第1関門を突破した。2年前に名門バレンシアのカンテラ(育成組織)に加入した大阪府出身の光久大晴君(12)が、来月から1つ上のカテゴリーに昇格することが決まった。素質を買われ、11年夏に下部組織のバレンシア・ジャパン(神戸)から移籍。スペインは年齢ごとに細かくチームが分かれており、昨季まで10~11歳の「アレビン」に所属。厳しい生存競争を勝ち抜き、12~13歳の「インファンティル」の一員となる。

 ドイツ代表DFラームを目標とする光久君は、身長145センチと小柄ながらスピードとジャンプ力に優れ、1対1に強いDF。現地の学校に通い、この2年間でスペイン語の日常会話ができるまでに成長。「いい友達、仲間に恵まれた。同時に競争相手であり、緊張感を楽しめている」。感情の起伏が激しいスペイン人の中にあって、日本で培った規律を持ち、リーダー的な役割を務めたことが昇格の決め手になったという。

 バレンシア・ジャパンの中谷吉男校長は「自信がついて落ち着いて物事に取り組めるようになった」と目を細める。小学生年代は8人制サッカーのスペインでは、この年代から11人制に移行。マジョルカ、ヘタフェのカンテラでコーチを務めていた同校長は「残ったとはいえ、ここからが勝負」と力説する。そんな言葉を胸に、たくましさを増した光久君は「スペインに送り出してくれたことに感謝している」。現在一時帰国する日本から、今月下旬にバレンシアへと戻り、勝負の新シーズンに備える。

 ◆光久大晴(みつひさ・たいせい)2001年(平13)3月20日、大阪府豊中市出身。兵庫・仁川学院小からスペインへ。将来の夢は「W杯優勝」。身長145センチ、体重35キロ。DF。

 ◆スペインの育成ピラミッド

 8~9歳は「ベンハミン」、10~11歳は「アレビン」、12~13歳は「インファンティル」、14~15歳は「カデテ」、16~18歳は「フベニール」と呼ばれる。バレンシアの場合、アレビンまでは各カテゴリーに12チーム、インファンティル以降はA、B、Cの3チームに絞られ、各20~22人で構成。なおフベニールの上はFW指宿洋史のいるBチームで、その上にトップチームが君臨する。