<サッカー全日本高校女子選手権:常盤木学園1(PK5-4)1藤枝順心>◇準決勝◇7日◇ノエスタ

 常盤木学園(宮城)が、2大会ぶり6度目の優勝に王手をかけた。昨年度準決勝でPK戦の末に敗れた藤枝順心(静岡)に、1-1からのPK戦5-4で雪辱した。後半ロスタイムにエースFW白木星(あかり=3年)が同点ゴール。6人目に突入したサドンデスのPK戦を、GK小野真鈴華(あすか=2年)が止めて激戦を制した。11度目の進出となる決勝は11日に行われ、2連覇を狙う日ノ本学園(兵庫)と対戦する。

 常盤木学園の選手が、大喜びしながら駆け寄った。サドンデスに突入したPK戦。後攻・藤枝順心の6人目のキッカーを、GK小野が右手で止めた。すぐチームメートに押しつぶされて、小野が見えなくなった。「絶対に勝てると思っていた」。入学当初はDF。反応の良さを買われ1年生の5月からGKになった。昨年度はメンバーから外れ、テレビ観戦していた守護神が決勝進出に貢献した。

 後半ロスタイムに追いつかれた1年前と、まったく逆の展開だった。1点を追う後半ロスタイムに白木が同点弾。前回常盤木学園の2人が失敗して2-4で決着したPK戦。今回は藤枝順心が2人外した。

 昨年度の大会終了後、そのまま約30人がフランスに遠征した。現地ではOGで、同国リヨン所属のなでしこジャパンDF熊谷紗季(24)が駆けつけてPKを教えた。「しっかり狙いを定めて」と話しながら、熊谷は大きくシュートを外した。そして選手たちに伝えた。「PKとはこんなもの」。

 だれでも失敗すると、選手は学んだ。だからこそ、気負いはなかった。遠征に参加していたDF松久保明梨とFW杉原遥波(ともに3年)は、確実にゴールした。常盤木学園は過去の大会で5度のPK戦を経験して2勝3敗。分は悪かった。

 日ノ本学園との決勝。阿部由晴監督(52)は「胸を借りるつもりで勉強させてもらう」と慎重だが、13年度皇后杯2回戦で対戦し、0-6と大敗した一戦に現チームの主力6人が出場していた。屈辱は忘れていない。その1人、西川彩華主将(3年)は「優勝したい」と言葉に力を込めた。最多5度を更新する6度目の日本一へ、願ってもない相手になった。【久野朗】