<高校サッカー:星稜3-0日大藤沢>◇準決勝◇10日◇埼玉

 初の決勝を狙った日大藤沢(神奈川)の快進撃が止まった。日藤のマラドーナことFW田場ディエゴ(3年)が涙で終戦。独特のステップとドリブル、後半36分の左足シュートなどで沸かせたが、不発だった。ゲーム主将としては、前回出場した7年前のキャプテンマークも巻いて戦ったが「学校初の4強も、目標はそこじゃなく日本一だったので。うれしくない」と淡々と話した。

 1回戦から3戦連発。得点ランク首位タイ(3得点)のまま姿を消すが、主役の1人になった。力の源はハングリー精神だ。小学6年の時、日系ペルー人の両親の里帰りで同国の首都リマに行った。乗っていた車が強盗に遭い、ボールを持って路上に出ると十数人に囲まれて草サッカーが始まった。過酷な環境にあるルーツの国で思ったのは「日本で恵まれた自分が頑張らないわけにはいかない」。そして今、日本代表戦が行われる埼玉スタジアムでプレーするまでに成長した。

 すべての取材後に話しかけると、気が抜けたのか「立つのもつらいっす」と両膝に手をついた。1年の時に校則違反で退学寸前になり、練習の無断欠席で丸刈りにもなった。それでも続けた高校サッカーで完全燃焼し、国士舘大に進む。「この舞台で走力が足りないと痛感した。プロになって(佐藤)監督に恩返ししたい」。悔しさは今後のステージで晴らす。【木下淳】