<J1:札幌0-2横浜>◇第33節◇24日◇札幌ド

 ゴンがJ1に帰ってきた。札幌FW中山雅史(45)が横浜戦の後半45分から今季初出場。得点はならなかったが、公式戦出場は10年9月5日の天皇杯グルージャ盛岡戦以来811日ぶり、J1で09年11月28日広島戦以来1092日ぶりの出場を果たした。45歳2カ月1日でのJ1出場で、自身が持つ最年長記録を更新したが、チームは今季ホーム最終戦を0-2で敗れ、J1ワースト27敗目を喫した。

 役者だった。後半43分、古辺コーチがアップ中のゴン中山を呼んだ。「どう自分を盛り上げるか試行錯誤したけど、いい緊張感がありましたね」。さっそうとビブスを脱ぎ捨てると、背番号9が表れた。札幌ドーム1万9587人の観衆からわき上がる盛大な“中山コール”。同45分、猛然とピッチに走り出ると、直後にFW榊からのパスをヘッドでMF古田に戻した。

 わずか3分、1タッチのJ1舞台も、ファンに健在ぶりをアピールした。これがゴンだ。「もっとボールに絡まないとね。でもとりあえずノーミス。パス1本だけど、成功させたからね」。プレーだけじゃない。粋なゴン節も帰ってきた。

 痛みを気合で封じ込んだ。「膝の痛みは日々違うけど、終わった後にケアするなり、つぶすなりしてね。いかに動きでカバーしていくかなんですよ」。昨年12月から静岡・御殿場の専門トレーナーとともに、膝の痛みが軽減されるランニングフォームを研究した。O脚にして、さらに足の指に力を入れ蹴り上げる新走法で痛みを和らげた。

 それでもすんなりとはいかなかった。順調に調子を上げていた9月末、ランニング中に「痛い、痛いっ」と苦悶(くもん)の表情を浮かべ倒れ込んだ。両膝はボロボロ。痛みをゼロにするのは不可能な状態だった。それでもピッチに立ちたい。降格決定後の10月7日から1週間、再度、御殿場に戻り状態をチェックした。今月20日に1年2カ月ぶりの完全合流。トレーナーからも「まだやれる」と太鼓判が出た。苦しみ抜いてつかんだ3年ぶりのJ1舞台だった。

 痛み止めを飲んで挑んだ復活への1歩だ。「まだ楽しいってとこまでいけてない。今回はホームだからってのもある。次は新潟戦に向けて明日からまた練習しないと」。08年3月15日のG大阪戦以来のゴンゴールはお預けとなったが、不死身の闘志は衰えていない。可能性ある限りJ1最年長45歳は走り続ける。【永野高輔】