Jリーグが、浦和に史上最も重い「無観客試合」という厳罰を下した。村井満チェアマン(54)が13日、東京・JFAハウスで会見。8日のJ1浦和-鳥栖戦(埼玉)で一部の浦和サポーターが「JAPANESE
ONLY」という差別的な横断幕を掲出した案件について、けん責に加え、23日の浦和のホーム清水戦(埼玉)を無観客試合として開催することを決めた。サポーターによるトラブルが頻発する浦和は、今後の防止策などを発表した。
浦和に下された罰は、Jリーグ史上最も重い「無観客試合」だった。村井チェアマンは会見で「今回は差別的な行為であったと考えざるを得ません。全ての関係者を裏切ることになった」と言い切った。
8日の鳥栖戦で、一部の浦和サポーターが通路に「日本人以外お断り」と解釈できる「JAPANESE
ONLY」との横断幕を掲出。浦和の聞き取り調査に対して当事者の「ゴール裏は聖地。他の人に入ってほしくなかった」という説明も、差別を否定するには至らなかった。過去、Jリーグがクラブに下した処分は最大で制裁金。浦和サポーターは10年の仙台戦でも人種差別的行為を犯した上に、再三制裁を受けてきたことも、今回の厳罰につながった。
Jリーグは今季から国際サッカー連盟(FIFA)が強調している反人種差別に基づき、規約を改定。差別に厳しく臨む意向を示している。アジア戦略を進める上でも、人種差別に関する事案は致命傷にもなりかねないだけに、処分は速やかに決定した。
以前は制裁の内容決定まで1カ月以上かかることも多かったが、今回は事案発生から5日。10日に浦和から最初の報告を受けた村井チェアマンは、12日に「無観客試合」という自らの制裁案を電話で裁定委員会に相談。同意を得て、裁定が決まった。
問題の横断幕の掲出を認識しながら、浦和側が即座に対応できなかったことについて「クラブとサポーターの体質で、改善してほしい。差別的行為を放置したこと自体が差別的行為に加担したと思われても致し方ない」と断罪。勝ち点没収ではなく無観客試合とした理由は「直接的にサポーターが影響を受けるという意味。今後の処分の基準値となる」と話した。
懲りずに問題行為を繰り返してきた浦和サポーターと、結果的に「再犯」を許し続けた浦和。同チェアマンは「こうした行為が改善されなければ(より重い裁定も)視野に入れる。これからは断固としてこういうことはさせない」と明言。再発なら今以上の厳罰を示唆するなど、最後まで厳しい姿勢を貫いた。【菅家大輔】<Jリーグのクラブへの制裁>
Jリーグ規約第142条[制裁の種類]第1項に記されている。
<1>けん責(始末書をとり、将来を戒める)
<2>制裁金(1件につき1億円以下の制裁金を科す)
<3>中立地での試合の開催(試合を中立地で開催させる)
<4>無観客試合の開催(入場者のいない試合を開催させる)
<5>試合の没収(得点を0対3として試合を没収する)
<6>勝ち点減(リーグカップ戦の勝ち点を1件につき15点を限度として減ずる)
<7>出場権剥奪(リーグカップ戦における違反行為に対する制裁として次年度のリーグカップ戦への出場権を剥奪する)
<8>下位ディビジョンへの降格(所属するディビジョンより1つ以上下位のディビジョンに降格させる)
<9>除名(Jリーグから除名する)<横断幕掲出の経過>
▽8日午後2~3時ごろ
浦和-鳥栖戦が行われた埼玉スタジアムの209ゲートに「JAPANESE
ONLY」との横断幕がピッチとは反対側に向けて、サポーターグループの3人によって掲出された。
▽同3時半ごろ
警備員が確認。同4時58分ごろ、ファンから、同横断幕の問題点の指摘を受け、警備責任者が警備会社の本部に連絡した。
▽同4時
キックオフ。
▽同5時9分ごろ
運営本部は当該横断幕を問題ありと判断し、警備会社に対し、撤去するよう指示。
▽同5時10~15分ごろ
警備責任者が当該サポーターに撤去を求めたが、メンバーは「試合中のため厳しい」「無理」と回答。
▽同5時15分ごろ
横断幕は当事者と合意のもと撤去する手順となっており、運営本部は「試合後、速やかに対応する」よう警備会社に指示。
▽同6時ごろ
試合終了。
▽同6時4分ごろ
当該サポーターが撤去しないため、警備員がメンバーに取り外す旨を伝えて撤去。
▽同10時ごろ
ソーシャルメディア等で波紋が広がっていることを受け、広報部を中心に本事案について公式メッセージを準備。
▽同11時50分ごろ
公式サイトで第一報。
▽9日
同サイトで第2報。
▽10日
淵田社長がJリーグを訪問し経過を説明。
▽13日
無観客試合の処分決定。