20日開幕のワールドカップ(W杯)カタール大会を日本では、インターネットテレビ局ABEMAが全64試合を無料生中継する。日刊スポーツの取材によると、100億円(推定)規模の巨額を投じて放映権を獲得。日本中に無料でW杯を届ける。

「新しい未来のテレビ」を掲げるABEMAのビッグチャレンジ。W杯プロジェクトの統括責任者、株式会社サイバーエージェントの執行役員、野村智寿氏(41)に聞いた。

(聞き手・八反誠)

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-いきなり恐縮ですが、今回、一体どのくらいの額で放映権を獲得されたのですか

ハハハハ(笑い)。守秘義務があるので金額は、お伝えできません。ただ、ABEMAの中では、今までで一番規模の投資かな、と思っております。

-経緯を教えてください

サイバーエージェントグループ自体、広告事業やゲーム事業などが、比較的順調に成長しています。そのあと押しで、大きい投資をABEMAができるというタイミングだったことが1つ。ABEMA自体も、開局から6年以上たって、いろんな経験をしてきました。W杯のような世界一と言っても過言ではないコンテンツを、しっかり世の中に届ける役割を果たせるチャレンジができるんじゃないか、というタイミングが重なり合って、「やろう」という意思決定に至ったということです。

-得られるものは

どのくらい、ネットのサービス、ABEMAで見ていただけるかは我々の頑張り次第ですが、今までをはるかに上回る利用者、視聴者数を見込めるというのは、容易に想像できます。知っていただいて理解していただいて、今後も、1人でも多くの方に使っていただけるようになれば、と思っています。この投資自体が絶対に回収できない、なんて思っているわけではありません。ただ、この1カ月で回収できるんですか? と言われたらそれは、さすがに難易度が高いと思うのと、ABEMAとしては短期的に回収したいというより、中長期的にみてサービスとしての格が一段あがることを目指しています。

-特にスポーツで、ビッグイベントの有料配信が増えていますが、無料という決断で今回も、日本中にW杯が届くことになりました。なぜ無料だったんでしょうか

第一に、ABEMA自体が「新しい未来のテレビ」というビジョン、コンセプトがあります。従来のテレビは、時間と場所の制限がありますが、ABEMAの場合はスマホやパソコン、テレビでも見られます。場所からの解放、時間からの解放と言っているんですが、より多くの方に楽しんでもらうために無料で出すということが、まずありました。編成やチャンネルのあり方が従来のテレビ放送よりフレキシブルに対応できるので、サービスとしてスポーツ、生中継との相性がすごくいい。それもあってあまり悩むことなく、無料で提供しようと決めました。W杯は公共財に近いと、僕らは思っています。「みんなのもの」であるべき。そういったものを、純粋に届けたいという思いです。会社のパーパスが「新しい力とインターネットで日本の閉塞(へいそく)感を打破する」なんですが、今回、自由に無料で見られるというのは、我々のパーパス、理念、会社としてのスタンスにも、すごく通ずるものがあります。そういったいろんな要素があいまって、今回の無料という決断に至っている感じです。

-プロジェクトの本田圭佑ゼネラルマネジャー(GM)に期待することは

これまで、W杯で数々の“持ってる男”として、結果を出されている本田さんに、GMとして現地からの解説をはじめとして、自由に、本田さんの目線でW杯の素晴らしさを伝えていただきたいと思っています。

-いよいよ、開幕です

かなりの期間準備してきましたが、64試合を生中継するというのは今まで経験がないですし、ただ中継するのではなく、楽しんでいただけるように中継制作していかなくてはいけない。しっかり皆さんに届けなきゃいけないという緊張感で、ヒリヒリしてくる感じでいます。

◆ABEMA サイバーエージェント傘下の株式会社AbemaTVによる、動画配信事業。16年4月に本開局。24時間編成のニュース専門チャンネルや、オリジナルのドラマ、恋愛、アニメ、スポーツ、将棋など、多彩な番組を提供。過去に「THE MATCH 2022」など、話題となる番組を放送。