元日本代表FWカズ(三浦知良、55=JFL鈴鹿ポイントゲッターズ)が22日、FIFAワールドカップ(W杯)に挑む日本代表へ金言を送った。

ドイツ戦の前日、ドーハの悲劇以来29年ぶりにサッカーファンでにぎわうハマド国際空港に降り立った。ドーハの悲劇を、新しい日本サッカーの歴史をつくる原動力にしてほしいと願うキングは、ドイツ戦のキーマンとしてMF久保建英と鎌田大地、FW町野修斗に期待を寄せた。

悲劇を遺産へ、そして新たな歴史へ-。29年ぶりに悲劇の地を踏んだカズは、ブラジル代表を例えて日本代表にエールを送った。黒の上下ジャージーに黒のキャップ、薄黒のサングラス、白いスニーカー姿で12時間のフライトを終えた直後「空港も新しくなったし、街の風景も全然違うだろうな。当時はホテルに缶詰め状態だったから、テレビでクリケットの試合をずっと見ていたよ。風景を楽しむ余裕はなかった」と笑いを誘った直後だった。

カズ 1950年、ブラジルは地元のW杯決勝でウルグアイに逆転負けした。確か(決勝の会場)マラカナンには22万人が集まった。その負けからサッカーへの執着は大きくなったし、それがセレソン(ブラジル代表)の原点となった。日本サッカーにとって、ドーハはその位置にある。29年たっても語り継がれるしね。(今の代表が)新しい歴史をつくってほしい。ドーハの悲劇はそのシンボル、原動力になってくれればいい。

期待する選手を「全員」と言い、さらに「その中でも特に期待を寄せる選手」と聞かれると、少し考えた後「MF久保と鎌田、FW町野だ」と話した。

さらにかつての戦友・森保監督へもエールを送った。「冷静で柔らかい感じがあるけれど、実は信念を曲げずにまっすぐな人で意志が強い。信念を貫き通せる監督なので、迷わずに自分を信じて指揮してほしい」と話した。

大きな大会や欧州組が戻る時期になると代表選手を集めた食事会の「カズ会」を主催する。今回は欧州シーズン中で準備期間が少なかったため、実施できなかった。昨年東京オリンピック(五輪)前にもDF吉田麻也らベテランと若手を集めて「カズ会」を開く予定だったが「コロナ禍で実行できなかった」という。「まぁ、次の開催は欧州組が帰国する来年6月かな。若手も呼んでね」。W杯終了半年後、キングが新たな歴史を作った戦士たちと、ドーハの思い出話で夜を更かす。(ドーハ=盧載鎭)