史上最多に並ぶW杯5度出場のアルゼンチンのMFリオネル・メッシ(35=パリ・サンジェルマン)が、新たな“W杯伝説”への第1歩を踏み出した。

通算20試合目となった1次リーグ初戦のサウジアラビア戦に先発出場。前半10分にPKで先制ゴールをあげた。通算7点目。今大会で決勝までの全7試合に出場して自身初の優勝を果たせば、歴代最多出場記録を更新。さらに半世紀以上に及ぶ“バロンドールの呪い”の呪縛も解ける。「最後のW杯」と語る集大成の大会で、残された最後の栄冠に挑む。

◇  ◇  ◇  

7度の「バロンドール」(世界最優秀選手)をはじめ、世界サッカー史に幾多の偉業を刻んだメッシが、カタールで最後の、そして最大の大仕事をスタートさせた。35歳になったスーパースターは、1次リーグ初戦のサウジアラビア戦に先発出場。5度目のW杯のピッチに立った。

開幕前に南米の映像配信サービス『スタープラス』で「最後のW杯になる」と明言。前日会見では「今がキャリア最高かどうかは分からないが、とても調子がいい。ベストを尽くして、すべての瞬間を楽しむ」と決意を語った。フランスリーグで12試合7得点(6日時点)という結果も、自信の裏付けになっている。

06年ドイツ大会でW杯デビュー。今大会で3試合に出場すれば、英雄マラドーナの持つ21試合のアルゼンチンのW杯最多出場記録を抜く。さらに決勝までの全7試合に出場すれば、元ドイツ代表マテウスの25試合の歴代最多記録も更新する。くしくもサウジアラビア戦の会場は、その決勝戦の舞台でもあった。

自身初の優勝を果たせば“バロンドールの呪い”の呪縛も解ける。W杯前年に受賞すると、翌年のW杯で優勝できないというジンクス。クライフも、プラティニも、C・ロナウドも泣いた。09年に受賞したメッシも10年大会は準々決勝で敗退したが、昨年21年の受賞で再び“呪い”を解く権利を得ていた。

メッシのW杯は14年大会の準優勝が最高成績。代表ではタイトルと無縁だったが、昨年の南米選手権で、ようやく母国を主要国際大会優勝に導いた。メッシ頼みだったチームも、25歳のLa・マルティネスらが台頭して戦術も安定。国際Aマッチ36戦無敗の勢いで、カタールに乗り込んだ。

一昨年にマラドーナが亡くなって初めて迎えるW杯。伝説となった英雄を、メッシが名実ともに超えることができるか。86年メキシコ大会の、あのマラドーナのW杯以来、36年ぶり3度目の優勝のお膳立ては、整っている。

◆バロンドールの呪い フランス・フットボール誌選定の「バロンドール」(世界最優秀選手)をW杯前年に受賞すると、翌年のW杯に優勝できないというジンクス。74年大会のクライフ(オランダ)、94年大会のバッジオ(イタリア)、98年大会のロナウド(ブラジル)は準優勝。86年大会のプラティニ(フランス)は3位。02年大会のオーウェン(イングランド)、06年大会のロナウジーニョ(ブラジル)はベスト8。C・ロナウド(ポルトガル)は14年大会1次リーグ敗退、18年大会はベスト16。今年は10月にベンゼマ(フランス)が受賞したが、今回のW杯は開幕が約5カ月繰り下がり、初の11、12月開催となったため、前年受賞者はメッシになる。