師に託された思いを胸に、世界のピッチに立つ。日本代表森保一監督(54)が22日、FIFAワールドカップ(W杯)ドイツ戦を前日に控え、公式会見に臨んだ。

既にカタール、イランと、アジア勢が2敗。サウジアラビアは、格上アルゼンチンに大金星を挙げた中で「1つになってアジアのレベルを示したいが、我々は我々」と言い切った。

1日の代表メンバー発表会見では「行雲流水」と気持ちを表した。決戦の地・ドーハの場でも「その気持ちは変わらず」。静かに、モンスター攻略の絵を描いた。

4年前の、あの日を忘れたことはない。18年ロシア大会。コーチだった。日本はベスト16に進んだが、ベルギーに逆転負け。手が届きそうだったベスト8。ロストフの悲劇に沈む最中、声を掛けられた。

「次はお前がやる、お前に託す」

当時の西野朗前監督からだった。森保監督は言う。

「西野さんは直接、言葉で表現される方ではなかった。ただ、あの言葉は今も残っている」

即答は出来なかった。

「西野さんがいい結果を出して、西野さんがやるべきだと思っていて」

自問自答を繰り返す森保監督に、さらに言葉が送られた。

「いや、でも次はお前だ」

森保監督は言う。「もちろん、それで監督が決まる訳ではありませんが、その言葉掛けは、印象に残るし。常に胸に刻んでやっている」と引き継いだ。

大会前の準備期間、本番の雰囲気を側で、経験させてもらった。

「モンスターのような相手、モンスターのようなチームの中で勝っていく厳しさを教わった。大げさなことを言うと1・5倍~2倍の高強度とスピードの中で技術を発揮して戦わないといけない。本当に、今まで見ていても、後で見返しても、早送りで見ているんじゃないかなと思うのがW杯の試合」と世界基準も、つかんだ。

背中で学んだ。「日本はやれるだろうということで西野さんは選手を送り出していたし、そういう戦い方をしていたと思う」と、かみしめる。

「まだ改善しないといけないことはあるが、勇敢に戦えば同じ目線でやれるところは見せてもらえた」

4年の熟成を経て、日本を再び、世界の場に連れてきた。

戦が始まる。

「出来ると思わないと、絶対勝てない世界だというのを経験させてもらった」

師の背中に感じたモノを自身が示す時が来た。次は、森保一の番だ。【栗田尚樹】