史上最多に並ぶFIFAワールドカップ(W杯)5度出場のMFリオネル・メッシ(35)擁する優勝候補のアルゼンチンが、サウジアラビアに1-2で逆転負けした。

メッシは前半10分にPKでW杯通算7点目を決めたが、人工知能(AI)のオフサイド判定補助システムでゴールが取り消されるなど、追加点が奪えなかった。

今大会3試合出場で、英雄マラドーナの持つ21試合の同国W杯最多出場記録を抜き、決勝まで全7試合に出場すれば、元ドイツ代表マテウスの25試合の歴代最多記録も更新する。開幕前に「最後のW杯になる」と明言。前日会見では「とても調子がいい。ベストを尽くして、すべての瞬間を楽しむ」と決意を語ったが、想定外の結果になった。

自身初の優勝を果たせば「バロンドールの呪い」の呪縛も解ける。W杯前年に受賞するとW杯で優勝できないというジンクスに、クライフもC・ロナウドも泣いた。09年に受賞したメッシも10年大会は準々決勝で敗退。昨年の受賞で再び「呪い」を解く権利を得たが、初戦の敗戦でジンクスが再び浮かび上がってきた。

メッシのW杯は14年大会の準優勝が最高成績。代表ではタイトルとは無縁だったが、昨年の南米選手権で、ようやく母国を主要国際大会優勝に導いた。メッシ頼みだったチームも、25歳のラウタロ・マルティネスらが台頭。国際Aマッチ36戦無敗の勢いで、カタールに乗り込んだが、スタートでつまずいた。86年メキシコ大会の、あのマラドーナのW杯以来、36年ぶり3度目の優勝に初手から暗雲がたちこめてきた。

◆バロンドールの呪い フランス・フットボール誌選定の「バロンドール」(世界最優秀選手)をW杯前年に受賞すると、翌年のW杯に優勝できないというジンクス。74年大会のクライフ(オランダ)、94年大会のバッジオ(イタリア)、98年大会のロナウド(ブラジル)は準優勝。86年大会のプラティニ(フランス)は3位。02年大会のオーウェン(イングランド)、06年大会のロナウジーニョ(ブラジル)はベスト8。C・ロナウド(ポルトガル)は14年大会1次リーグ敗退、18年大会はベスト16。今年は10月にベンゼマ(フランス)が受賞したが、今回のW杯は開幕が約5カ月繰り下がり、初の11、12月開催となったため、前年受賞者はメッシになる。