日本が2-1でドイツを逆転で破り、歴史的白星で最高のスタートを切った。

1-1で迎えた後半38分、途中出場のFW浅野拓磨(28=ボーフム)が守護神ノイアーの頭上を射抜く、強烈な勝ち越し弾。日本(FIFAランキング24位)が優勝4度のドイツ(同11位)からW杯初対戦で金星を挙げた。過去最高のベスト8へ、浅野が広島時代の恩師、森保一監督(54)へ最高の1発を贈った。日本は27日にコスタリカと第2戦を行う。

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日本の歴史的勝利の主役になったのは、銀髪のジャガーだった。同点で迎えた後半38分、浅野がDF板倉のロングFKを受け、相手DFを置き去りに前線へ突破。最後は世界的守護神ノイアーの頭上に、右足で強烈なシュートを決めた。

「この瞬間を想像しながら全力で準備してきた。正直、狙ったわけではないが、シュートを打った結果があそこに行った。対戦相手に関係なく、ピッチに立てば100%のプレーを意識していた。みんなで勝ち取ったゴールです」

中東初開催のカタールの地で、両手の爪を立てる広島時代からのお得意、ジャガーポーズで喜んだ。長友からは「ブラボー」と抱きしめられた。

1点を追う後半途中から投入された。自慢のスピードで前線をかき回し、リズムをつかんだ。21日、ノイアー対策を聞かれた浅野は「どんな状態でもシュートを打つし、コースとか技術関係なく、気持ちで押し込もうと思う」。無心の1発だった。

9月10日のシャルケ戦で右膝内側側副靱帯(じんたい)断裂の大けがを負った。W杯が絶望視されながら、保存治療で懸命に間に合わせた。信頼して待っていたのは、広島時代の恩師森保監督だった。

昨年10月のW杯アジア最終予選オーストラリア戦は、負ければ解任危機だった森保監督を、浅野が放ったシュートがオウンゴール(決勝点)となった。再びの決勝弾に、指揮官は「途中から出た選手が試合を決めてくれた」と喜んだ。

前回18年ロシア大会は、予選で活躍しながら最後の23人から脱落。バックアップメンバーとなり、悔し涙を流した浅野は「メンバーに入れず、その時から全力で準備してきた」。

パスを供給した板倉も大会前、浅野と同じ右膝を故障し、ドイツでリハビリを重ねた。代表の計8人がそのドイツでプレーし、浅野は代表格として過去1分け1敗、W杯で初対戦だったドイツから初勝利をつかんだ。W杯での逆転勝利も初めて。それも「全て必然だと思う」という浅野が、日本悲願のベスト8に向けて先頭に立つ。【横田和幸】