セリエAでACミランが11季ぶり19度目のスクデット(優勝)を獲得した。22日に敵地で行われた今季最終戦・サッスオロ戦でFWジルーがドッピエッタ(2発)を決めるなど、3-0で快勝。久しぶりに頂点に立った。

19年10月から指揮を執るステファノ・ピオリ監督(56)にとっても、長い指導者人生の中で初のタイトルとなった。

そのピオリ監督が、選手たちの気を引き締めるためにミーティングで使用したのが、20年1月にヘリコプターの墜落事故で亡くなった米バスケットボールNBAのスター、コービー・ブライアント氏の映像だった。

ブライアント氏は13歳の次女ジアナちゃんとともに、41歳という若さで帰らぬ人となった。スポーツ・メディア「ジ・アスレチック」によると、ピオリ監督は2-0で勝利して優勝に王手をかけた15日アタランタ戦のあと、2009年NBAファイナル・レーカーズ-マジック第2戦後のブライアント氏のインタビュー映像を選手たちに見せたのだという。

指揮官は「彼はNBAファイナルで2勝0敗とリードしても『喜ぶことはできない。まだ仕事は終わっていない』と言っていた。我々も冷静さと集中力を保ち続ける必要があるし、それが最後は勝敗を分けるものになるんだ」と、その意味について説明していた。その後の1週間、ACミランの選手たちは浮かれることなく最終戦・サッスオロ戦へ万全の準備を行い、優勝を手にした。

ブライアント氏は、NBA選手だった父ジョー・ブライアント氏がイタリアリーグに挑戦したため、6歳から13歳までの日々をイタリアで過ごした。流ちょうなイタリア語も身につけた。

少年時代のブライアント氏はバスケットボールに加え、サッカーもプレー。ACミランの大ファンとなった。ブライアント氏が死去した直後のイタリア杯・ACミラン-トリノ戦ではミランの本拠地サンシーロの電光掲示板に「Legends Never Die(伝説は死なない)」などの文字が映し出され、両軍の選手たちが喪章をつけてプレーした。

ACミランは10-11年シーズン、アレグリ監督(現ユベントス監督)のもと、イブラヒモビッチやロビーニョ、カッサーノらを獲得して18度目の優勝を飾った。だが、その後はクラブの経営悪化などもあり低迷。14-15年からの7シーズンは欧州チャンピオンズリーグ(CL)にも出場できなかった。

そんなチームが、前回優勝時のメンバーであるイブラヒモビッチらを中心に見事復活。天国のブライアント氏もACミランのスクデットをさぞかし喜んでいるに違いない。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)

コービー・ブライアント氏(2012年8月撮影)
コービー・ブライアント氏(2012年8月撮影)