その去就に注目が集まっていたウェールズ代表FWギャレス・ベール(32=レアル・マドリード)の新天地が米MLSロサンゼルスFC(LAFC)に決まった。

ベールのRマドリードとの契約は今月いっぱいで満了となる。契約延長はなく、退団することはすでに決まっていたが、移籍先についてはさまざまな臆測が飛んでいた。

メディア上では古巣トットナムや、生まれ故郷のクラブであるイングランド2部カーディフなどが候補として挙がっていた。

しかしふたを開けてみれば、新たなクラブはLAFC。英BBC電子版はベールがなぜ同クラブを選んだのか考察する記事を掲載している。

同記事によると、ベールがLAFCを選んだ理由はいくつかある。金銭的な条件はもちろんだが、プレシーズンのツアーや家族と一緒の休暇で体験したカリフォルニアのライフスタイルを気に入っていたことも理由の1つ。

MLSのシーズンはJリーグと同じ春秋制で、プレーオフを含めて2月から11月にかけて行われる。そのため11月21日開幕の22年ワールドカップ(W杯)カタール大会に照準を合わせやすい。LAFCでコンスタントに出場機会を得られれば、W杯に向けてコンディションをピークに持っていけることも、決断を促した大きな理由だという。

ベールは今季Rマドリードでリーグ戦わずか5試合の出場にとどまった。ただ、全盛期ほどの爆発力はないにしろ、まだまだチームに違いをもたらすことができる選手であることは間違いない。今年3月のW杯欧州予選プレーオフA組準決勝ではオーストリアを相手に2ゴールを挙げて2-1の勝利に貢献。W杯切符をかけた6月の代表決定戦・ウクライナ戦では鋭いFKで決勝点となる相手オウンゴールを誘発した。

思えば、Rマドリードでの晩年は見ていてふびんだった。ケガの影響で欠場も多く、コンスタントに活躍することができなかった。とはいえクラブに多くのタイトルをもたらした功労者に対して、メディア、ファンは冷たかった。

その様子を見ていて、15年以上前に取材していた米大リーグ・メッツの松井稼頭央(現西武ライオンズ・ヘッドコーチ)の姿を思い出した。ニューヨークもメディアが辛辣(しんらつ)なことで知られるが、松井稼に対する批判は度を超えているように感じた。

少し調子が上がらないとメディアが大批判を展開する。するとファンはそれをうのみにし、球団に対してその選手を外すようにスタジアムで圧力をかける。チームが勝っているうちは問題ないが、チームの負けが続くと球団もファンの声を無視できなくなる。そして一部の選手に責任を押しつけるようになる。特に松井稼やベールのような外国人選手は、そういったターゲットにされやすいのだ。

3-1でRマドリードが勝利した17-18年シーズン・欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝・リバプール戦で見せたベールのオーバーヘッドゴールは、CL史上5指に入るゴールだと思う。あれくらい胸のすく活躍をW杯でも期待したい。そしてレアルファンにもう1度、自身のすごさを証明してほしいと思う。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)