20日にスティーブン・ジェラード監督(42)を解任したプレミアリーグのアストンビラがいきなり息を吹き返した。

23日にホームでブレントフォードと対戦。FWイングスの2ゴールなどで、開始わずか14分で3-0とリードした。後半にも1点を加え、4-0で勝利。5試合ぶり今季3勝目をマークした。

監督解任からわずか3日後の大勝に、アストンビラのサポーターたちも歓喜。英デーリーメール紙電子版によると、SNS上にはジェラード“前”監督をやゆする言葉があふれたという。

「3-0は信じられない。ジェラードは本当に我々を制止していたんだな」

「15分で3-0なんて。ジェラードがバカみたいだ」

「スティーブン・ジェラードが2度とプレミアリーグのクラブを指揮すべきではないことが証明された」。

23日のブレントフォード戦はコーチから昇格したアーロン・ダンクス暫定監督がチームを指揮。8月31日アーセナル戦から7試合で計4点しか取れていなかったアストンビラが、1試合で一気に4ゴールを奪ったのだから、ファンがジェラード監督にダメ出ししたくなるのも無理はない。

デーリーメール紙によると、前監督への“ディス”はさらに続き、あるファンは「申し訳ないけど、スティーブン・ジェラードが問題だった」と書き込み、またあるファンはメッシやイニエスタ、シャビがいたころの“最強”バルセロナの写真をSNSにアップ。「ジェラード抜きのアストンビラ」というキャプションをつけた。ジェラードのいないアストンビラはあのころのバルセロナくらい強いと言いたいのだろう。

ジェラード前監督はスコットランド1部レンジャーズを経て、21年11月に就任。しかし初年度の21-22年シーズンは14位。今季は11試合を指揮して2勝3分け6敗を不振にあえいでいた。解任もやむなしといった状況ではあった。

ただ、同前監督はリバプールでの現役時代、04-05年の欧州チャンピオンリーグ(CL)決勝に進出。ACミランに前半0-3とリードされながら、後半自らのゴールなどで追いつき、PK戦の末に優勝した「イスタンブールの奇跡」の立役者だ。数々の栄光のシーンを思い出すと、このまま指導者として日の目を見ずに終わってしまうのは忍びない。

どのスポーツでも監督交代直後にチーム状態が一瞬好転することはままある。それは前指揮官に対して不満を持っていた選手や、プレー機会を与えられなかったような選手たちがやる気を取り戻し、懸命に戦うからだ。だがそれはあくまで一瞬で、そういったモチベーションは長くは続かない。

アストンビラが今後、浮上し、ジェラード前監督の指導者としての力がなかったことが本当に証明されてしまうのか。それはあと1年、いやそれ以上待ってみないと分からない。個人的にはジェラード前監督には、また別のクラブであと1回くらいチャンスが与えられてもいいのではないかと思う。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)

10月23日、ホームでのブレントフォード戦に勝利し、喜ぶアストンビラのアーロン・ダンクス暫定監督(ロイター)
10月23日、ホームでのブレントフォード戦に勝利し、喜ぶアストンビラのアーロン・ダンクス暫定監督(ロイター)
10月23日、ブレントフォード戦でゴールを決め喜ぶアストンビラの選手たち(ロイター)
10月23日、ブレントフォード戦でゴールを決め喜ぶアストンビラの選手たち(ロイター)