「口は災いのもと」とはよく言うが、現在行われている22年ワールドカップ(W杯)カタール大会でも少し言いすぎて、その通りになってしまった人物がいる。
カナダ代表のジョン・ハードマン監督(47)。W杯初戦となった23日のベルギー戦で0-1と惜敗すると、試合後の円陣で選手たちにはっぱを掛けた。第2戦の27日クロアチア戦に向けて「ここ(W杯)は君たちのいるべき場所だ。我々はクロアチアをぶちのめす」。
日本語にすると少々言葉が荒いだけで、どうってことはない発言のような印象を受ける。だがもともとの英語では「ぶちのめす」という部分で放送禁止用語のいわゆるFワードが使われており、とても品がなく、失礼な表現で打倒クロアチアを表明してしまったようなのだ。
この発言をクロアチアの選手、監督たちは試合前に知っていた。そして闘志を燃やしてカナダ戦に臨むことになった。かくしてカナダは1-4でクロアチアにぶちのめされた。2ゴールを挙げたクロアチアのFWクラマリッチは「やる気を出させてくれてありがとうと、カナダの監督に感謝したいね」と話し、「我々は、どちらのチームがどちらのチームをぶちのめすのか、ちゃんとやってみせたよ」と付け加えた。
米国やメキシコといった強豪を抑えて北中米カリブ海予選を1位で通過したカナダだったが、あえなく開幕2連敗でW杯の舞台を去ることになった。しかも、その去り方がまた品格がなかった。
クロアチアのダリッチ監督は「試合後に相手監督の姿を見なかった。それが彼のやり方なんだろう。彼はとてもクオリティーの高いプロフェッショナルなのかもしれないが、いくつかのことを学ぶ時間が必要だね」と話し、カナダの指揮官が試合後の握手に現れなかったことに苦言を呈した。どんなに悔しい敗戦だったとしても、握手もせずにスタジアムを去るのは、恥の上塗りでしかないと筆者は思うのだが。
そのカナダのハードマン監督は自らの発言に後悔はないか? と聞かれると「自分としてはクロアチアへのリスペクトも含めて言ったつもりだった。もう少し冷静に話せば良かったのかもしれないが、自分にはまだまだ学ぶべきことがあるということだろう」と一応、反省。
その上で「ただ我々は最初の25分間は小さなカナダでも世界レベルのチームと競えることを示せたと思う」と話し、開始2分にFWデービス(バイエルン・ミュンヘン)のヘディングゴールで先制し、前回大会準優勝のクロアチアを多少なりとも慌てさせた選手たちをたたえていた。
【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)