ドイツ代表を支える「チーム・ケルン」という組織がある。代表をサポートする分析チームだ。

ドイツ代表と、私が在籍していたケルン体育大が06年に立ち上げた共同プロジェクトで、対戦国の選手や戦術、セットプレーなどを分析している。FIFAワールドカップ(W杯)と欧州選手権に向け、大会の2年前にチームを発足し、大会終了までの2年間が任期となる。

私もW杯ブラジル大会に向けて活動していた12-14年に在籍した。当時、受講していた授業の教授がこのプロジェクトの責任者という偶然が重なり、私はチーム・ケルンへの参加が認められた。その後2年間にわたる貴重な経験ができた。大会までは1~2カ月に1度の講習を通じ「ドイツサッカー協会が求める人材」としての基礎を学んでいく。その内容は次の通り。

・試合分析(ドイツサッカー協会が定めるフォーマットにのっとり試合で起こった事象を学術的にまとめる)

・個人分析(その選手の強み/弱み)

・グループ分析(攻撃ユニット/守備ユニット、決まった形はあるか。どのような現象が何度も起こっているか)

・チーム分析(攻撃/守備/攻守/守攻での各フェーズごとの特徴)

・セットプレー分析(過去10試合にセットプレーの傾向と対策)

・対戦国の現状の分析(経済状況、人口、失業率を徹底して調べる)

大会前にはケルンで当時アシスタントコーチであったフリック氏(現代表監督)からチーム・ケルンのロゴ入りのポロシャツを手渡され、ブラジルで現地を視察していたレーブ監督がビデオメッセージで「優勝時にはカップを持ってケルンに行きます」と言われ、チームの士気が上がったことを覚えている。(実際に優勝したのでその約束は果たされた)

14年の大会中、対戦する可能性のあるチームの試合後、すぐに情報を現地へ送った。総勢33人の「チーム・ケルン・ブラジル」には今も第一線で活躍している人材が多く、互いに刺激を与える存在となっている。

また、代表チームがW杯を勝ち取ったことでチーム・ケルンはピッチ上の「一貫した育成改革の成果」という以外にも、キャンプ地を自ら作ったり、データ分析を基にプレーモデル作成など、ピッチ外の活動も注目されるようになっている。(UEFA・A級コーチ)

◆浜野裕樹(はまの・ゆうき)1988年(昭63)7月4日生まれ、横浜市出身。日体大卒-ケルン体育大留学。「チーム・ケルン」一員として14年W杯優勝のドイツ代表で試合分析担当。現在は小学校教員の傍ら、フォルトゥナ・ケルンでU15ブンデスリーガ監督兼任。UEFA・A級ライセンス。ドイツ10年目ケルン在住。2児の父。