新型コロナウイルスにより延期されていたスペインリーグが、3カ月の沈黙から抜け出し、ついに再始動した。

1部、2部ともに約40日間で11節を戦うハードスケジュールではあるが、ラ・リーガ(スペインリーグ)はすべてのクラブが安全にリーグ戦に臨むために、一足早くスタートしたドイツ・ブンデスリーガの経験も踏まえ、新型コロナウイルス感染に対する衛生措置から、選手のコンディションを守るものまで、厳格なプロトコル(実施規約)を定めた。

その内容の一部を見てみると、選手は試合前後に新型コロナウイルス検査を受ける必要があり、陽性反応が出たら即座に隔離される。

ホームチームは試合会場まで自宅から自家用車で向かい、アウェーチームは飛行機や電車での移動の場合、チャーターする必要がある。そしてバス移動で25人を超える場合、安全な距離を確保するためバスを2台用意しなければならない。

また、夏場のハードスケジュールでの開催となるため、選手の健康を考慮し、試合のメンバーは18人から23人に、その中で控え選手は7人から12人に増員され、交代枠が3枚から5枚に増加されている。そして前後半の各30分にクーリングブレーク(給水タイム)が設けられている。

試合前のチーム間や審判団とのあいさつ、スタメンの集合写真はすべて行わず、チームメートと触れ合いながらゴールを祝う行為も禁止となっている。

そして試合球は絶えずボールボーイによって消毒され、選手はハーフタイムにユニホームを全て交換する必要があり、さらに手の消毒を経てから再度ピッチに向かうこととなる。試合後の記者会見はビデオ通話形式で実施される。

このように数多くの新たな規則が設けられ、リーグ戦が無観客で再開した中、1部、2部でプレーする日本人6選手の初戦の状況を追ってみる。

1部マジョルカ所属のMF久保建英は、ホームで行われた首位バルセロナ戦にフル出場。チームは0ー4で敗れたものの、強豪相手に攻撃の中心となった。マジョルカの枠内シュート3本はすべて久保の足から生まれており、アス紙やマルカ紙では唯一となるチームトップの2点(最高3点)がつけられた。現在の順位は勝ち点25の18位で降格圏内のまま。残留圏内の17位セルタとの勝ち点差はわずか1となっている。

1部エイバル所属のMF乾貴士は、アウェーで行われたレアル・マドリード戦に後半33分から途中出場。短い時間ながら好プレーを見せ、アス紙はチームトップタイの2点、マルカ紙は1点をつけた。1-3で敗れたエイバルは勝ち点27の16位で、降格圏内の18位マジョルカとの勝ち点差はわずか2と僅差である。

2部サラゴサ所属のMF香川真司はホームのアルコルコン戦に先発出場。前半のみのプレーとなったがヒールパスでチャンスを演出するシーンもあり、アス紙はチームトップタイの2点、マルカ紙は1点をつけた。チームは1-3で敗れたものの、勝ち点55で1部自動昇格圏内の2位をキープ。1位カディス、3位アルメリアとの勝ち点差はそれぞれ2となっている。

2部ウエスカ所属のFW岡崎慎司は、古巣マラガとのアウェーゲームに先発出場し、53分間プレーした。チームが3-1で勝利した中、チーム得点王(8得点)の本領を発揮できず、アス紙の評価が1点だった一方、マルカ紙は最低の0点と手厳しいものとなった。ウエスカは現在、勝ち点53で1部昇格プレーオフ圏内の4位。1部自動昇格圏内にいる2位サラゴサとの差はわずか勝ち点2である。

2部デポルティボ所属のMF柴崎岳は、ホームのスポルティング戦にフル出場。チームが0-0で引き分けた中、中盤の核となった柴崎にアス紙は両チーム合わせて唯一となる最高3点、マルカ紙はチームトップとなる唯一の2点をつけた。デポルティボは勝ち点36で降格圏内の19位。残留圏内の18位オビエドと勝ち点で並んでいる。

2部エストレマドゥラ所属のGK山口瑠伊は、エルチェとのアウェーゲームで出番なし。チームは1-1で引き分け、勝ち点32で降格圏内の21位に低迷している。

全クラブが厳しいプロトコルを順守しつつ、3カ月ぶりとなった公式戦初戦を無事に終えたが、新型コロナウイルスとの隣り合わせの中で残り約1カ月間、かつて経験したことがないハードスケジュールを走り抜けることになる。優勝、昇格、降格など、さまざまなものをかけた気の抜けない戦いが今後も続く。【高橋智行】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)