バルセロナが18-19年シーズン以来となる4季ぶりのスペインリーグ優勝に向けて大きく前進する中、欧州リーグの決勝トーナメントプレーオフ第1戦(16日=日本時間17日午前2時45分)、マンチェスター・ユナイテッドとの大きなテストを目前に控えている。

昨夏、計1億5300万ユーロ(約214億2000万円)を投資した大型補強で、DF=クリステンセン、ベジェリン(※今冬退団)、マルコス・アロンソ、クンデ、MF=ケシエ、FW=レバンドフスキ、ラフィーニャの7人を獲得。シーズン前半戦、レバンドフスキが大爆発したことで国内リーグは好調だったが、DF陣のけが人続出が影響し、欧州チャンピオンズリーグ(CL)では2季連続の1次リーグ敗退という憂き目に遭った。

再び最悪な状況に陥ったと思われたが、11月上旬に今季初めてスペインリーグで首位に立つと、安定した戦いぶりで現在に至るまで一度もその座を譲ることなく、2位レアル・マドリードに勝ち点8差をつけている。

■シャビ監督のもとで連勝街道

現在、公式戦16試合連続無敗(14勝2分け)をキープし、今年に入り公式戦11連勝、そしてスペインリーグ6連勝を達成。さらにその間、サウジアラビアで開催されたスペイン・スーパーカップではRマドリードを破り、シャビ監督指揮下で初タイトルを手に入れた。

バルセロナがこのように成功を収めている理由は何なのだろうか?

その一番の要因は堅固な守備にあるだろう。ここまで戦ったスペインリーグ21試合のうち16試合でクリーンシートを成し遂げ、失点はわずか7。失点数が1桁台というのは欧州5大リーグ(スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ、フランス)の中でもバルセロナだけである。

■完全復帰したアラウホの存在

守備面が好調な理由として、キャリア最高のシーズンを送っていると言われるテア・シュテーゲンや、ワールドカップ(W杯)前のケガから完全復活を果たしたアラウホの存在が大きい。さらに加入当初そこまで大きな期待されていなかったクリステンセンが優れたパフォーマンスを発揮し、本来CBのクンデが右サイドバックに定着したことなども堅守の鍵となっている。

また、シャビ監督がベースとなるイレブンを見出し、これまでの3トップからFWを1人減らしてMFを4人起用していることもその要因のひとつと言える。ガビを偽の左ウイングに配置した戦い方が完璧に機能し、復調したブスケツや素晴らしいプレーを見せるペドリやデ・ヨングとともに中盤に厚みを持たせて絶えず数的有利の状況を作り出し、特にボールを失った後のプレスの速さが際立っている。

これらの要素がうまく重なり合い、バルセロナはレバンドフスキや現在負傷中のデンベレに頼ったシーズン前半戦の戦い方から脱却した。しかしシャビ監督はこれまで攻撃的なサッカーを標榜(ひょうぼう)していたため、最少得点差での勝利が多いやや保守的な今の戦い方に批判も出ている(※スペインリーグでこれまで1-0での勝利が7回あったが、これは欧州5大リーグ最多)。

さらに直近のビリャレアル戦で今季の公式戦で初めて、大きな武器の1つであるボール支配率で相手を下回ったことも、これまでと比べて攻撃的でないことを示唆するものになっている。

■スペイン内外で2つの顔持つ

そのことについてシャビ監督は16日に開催される欧州リーグ・決勝トーナメントプレーオフ第1戦マンチェスターU戦の前日会見で、「私が誰か(批判している人々)を納得させる必要なんてない。選手やクラブ、会員だけを納得させればいい。我々はプレースタイルを変える必要があった。それについては皆の足並みはそろっていると思う。選手たちはその考えに納得しているし、会長も満足している。納得していない人たちには申し訳ないがこれが私の考えだ」と、何を言われようとも結果が出ている今の戦い方を貫くことを強調した。

バルセロナにとってマンチェスターU戦は、自分たちがここまでやってきたことに対する試金石となるだろう。国内の相手にはその実力を遺憾なく発揮し、4季ぶりのスペインリーグ優勝に大きく近づいている。一方、欧州の舞台ではシャビ監督の就任以降、サポーターを納得させるような試合がほとんどできておらず、スペイン内外で2つの顔を持つと揶揄(やゆ)されることもある。

■シャビ監督は会見で意気込み

シャビ監督はその原因となっている欧州カップ戦で失点が多いことをマンチェスターU戦前日に指摘され、「我々はこれまで欧州カップ戦のレベルに達していなかったので、マンチェスターU戦では自分たちがいい時期を過ごしていること、そしてDFラインが日々良くなっていることを示したい。我々が欧州の舞台で十分戦うことができることを証明するための重要なテストになる」と意気込みを語っていた。

スペインリーグで圧倒的なリードを得ているバルセロナの実力が本物なのか、プレミアリーグ3位の強豪相手の一戦は、それを確かめるための注目のカードとなるだろう。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)