今季限りでレスターを退団することが決まっているFW岡崎慎司が、最終節チェルシー戦で後半21分から途中出場した。

加入1年目で奇跡のリーグ優勝を成し遂げた岡崎がピッチに入ると、その勇姿を見届けようと詰めかけたサポーターから大歓声を受け「うれしかった。サポーターの記憶に残ったんだなというのはあらためて実感できたので。ただ、ここだけでは終わりたくないと思うので、また『あいつ頑張ってるな』と思われるプレーを今後もしていきたい」と感慨深く話した。

レスターの一員としてピッチで過ごした、最後の約30分間は2列目の中央に入った。中盤でDFを背負って体勢を崩しながらもボールをキープするなど、派手さのない献身ぶりは変わらない。ゴールとはならなかったが、無失点に貢献した。

試合後は、同じく退団が決まっているDFシンプソンとともにチームの最後を歩いて場内を1周した。スクリーンにはチームメートからのビデオメッセージが流れ、スタンドからふたたび歓声をおくられた。

試合を終えて心境を問われた岡崎は「半々ですね」と言葉を選んだ。「最後の方は役に立たなかったし、最初の2年半、けがをするまではかなりやれていたとも思うんですけど、その後は、なかなか厳しい戦いが続いた」と、決して順調ではなかった道のりを振り返った。

4年間で最も記憶に残る試合を問われると、「鮮明にこれがというのはあまり覚えていない」と話した。「あのとき良かったというよりは『あのシーンこのシーンでこうしておけば』とか、悔しい思い出しか残っていない。感傷に浸れないんです。優勝したことよりも、結果を出せなかったことの方が(記憶に)残ったり」。自ら“損なタイプ”と話すこのメンタリティーが、はい上がることを繰り返してプレミアリーグまでたどりついた岡崎の原動力の1つでもある。

プレミア優勝という、貴重という言葉では表現しきれないほどの経験。一方で、出場機会をなかなか勝ち取れない時期も短くなかった。「いろいろな葛藤もあった中、4年間、最後まで契約をまっとうしたということで、本当に素晴らしい経験だったと思える。すごい思い出、というように美談として話せばかっこいい言葉になるかもしれないですけど、自分の中では悔しい面がほとんど」と、自身にしかわかることのない感情を言葉にした。

岡崎が自身に満足することはないが、FWの日本人選手がプレミアリーグで生きる道を1つ示したことは大きな功績だ。得点能力だけでなく守備への献身性も高いプレースタイルから、FWとDFを合わせた“FD”などとも形容された。「見た人の記憶に残してもらえて、それがまた、いいイメージで日本人のことを思ってもらえるようになればいいなと思います」。日本を代表するFWの1人として、たしかな足跡をイングランドに残した。

来季に向けては「まだ(白紙)」としつつ「自分の気持ちがワクワクする場所に行けるのが1番だと思う。壁が高いとか、そうことは全く考えずに、高くても自分が燃えればいけると思うし」と話した。ドイツ、イングランドと渡り歩いたストライカーは、次なるステージとしてスペイン挑戦のための可能性を模索している。