いざ、夢舞台へ-。スペイン1部は11日(日本時間12日)に開幕する。昨季2部で優勝して1部昇格を決めたウエスカFW岡崎慎司(34)が、日刊スポーツのインタビューに応じた。 イングランド、ドイツに続き、欧州4大リーグの3つの1部リーグでプレーするのは日本人初の快挙。MF久保建英(19)が所属するビリャレアルとの13日(日本時間14日)の初陣を前に語った過去、現在、未来への思いを「FW岡崎慎司 リスタート」と題し、3回にわたって掲載する。【取材・構成=浜本卓也】

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3年前から果たしたかった約束がある。スペイン1部デビュー前に、岡崎が公私ともに親交の深いエイバルMF乾貴士(32)との思い出の1ページを明かした。

岡崎 スペインに絶対に行くからって3年前ぐらいからずっと言ってたんです。やっと1部で一緒にプレーできるのは楽しみです。

2歳下の乾に「サッカー小僧」と強い共感を抱く。

岡崎 あいつもドイツで2部から経験して、結構苦労人だと思うんです。どちらかと言うとサッカーだけしかないという、同じような生き方。だから話も合う。バルセロナから点を取ったりカンプノウで得点したり、あんな小さな街のチームでずっと残留に貢献して、ワールドカップ(W杯)でその苦労を解放した。ここまで続けてやっているリスペクトもある。おれもやっとたどり着けた。

今季のスペイン1部でプレーする日本人選手は、もう1人いる。19歳のビリャレアルMF久保建英だ。

岡崎 確かなものを持っているのは重要だと思います。偶然何かができたとかじゃない、久保君は。確実にこいつは次の試合はこれぐらいはできるなってものを身につけている。満足することがないような環境にいて確実にずっと今のプレーを続けていれば上にいけると思う。

そんな久保と、13日(日本時間14日午前1時半)の開幕戦で対戦する。サッカーの神様の粋な計らいに、自然と声が弾んだ。

岡崎 なんとなく来る気はしていたんですよね。どちらかが。日本人対決、絶対あるんちゃうかなって。自分がFWとして、どういうプレーを1部で90分間続けているのかを楽しみに見てほしい。レスターとかでは周りがここにいてほしいなというところにカバーして入るパターンでしたけど、今は自分が前で引っ張っていく。そういうプレーを見てもらって、最後に1部でどれだけ結果を残せるかを見てほしいです。

05年12月3日、J1清水エスパルスでリーグ戦の第1歩を刻んだ。そこから5399日。日本、ドイツ、イングランド、スペインでリーグ戦計400試合・105点を積み上げた。夢のスペイン1部で、401試合目のページをめくる。まだまだ上を目指していくのだろうかと思いきや「いやいやいや」と明朗なトーンで制した。

岡崎 まだまだって言っても、多分見えてる。見えているからこそ、頑張れるのかもしれない。24歳とかみたいにあと10年っていうよりは、海外でトップでやれるのもあと2、3年だと思っている。みんなと同じやと思うんですけど、自分のためやから頑張れるって気持ちでやってます。そういう環境にいさせてもらっていることへの感謝は常にありますが、どれだけ自分にフォーカスするか。自分の状態とか現実を受け止めたうえで今日、生きるためにどうやっていくか。そういうのはコロナの時も感じました。先が見えない中で頑張ることって、結局はその日家族と一緒にいて何を求めているかとか、いろんな課題を1つずつ乗り切ることで満足したり、毎日「これができたね」「できなかったね」を見つけて次できるようにしたりとか、少しずつ積み重ねていく楽しみを感じ、自分で超えていくしかないなと思います。どんな状況になっても。

座右の銘は「一生、ダイビングヘッド」。舞台が変わっても、変わらないものがある。34歳、夢舞台でのリスタート。笑顔で、全力で、今を生きていく。【取材・構成=浜本卓也】

◆岡崎慎司(おかざき・しんじ)1986年(昭61)4月16日、兵庫・宝塚市生まれ。滝川二高から05年清水入団。08年北京五輪に出場し同9月にA代表初選出。11年にブンデスリーガ1部シュツットガルトに移籍。マインツを経て15年にプレミアリーグのレスターに。昨季はスペイン2部のマラガ移籍も登録問題で契約解除。ウエスカに入団し、12得点を挙げ、1部昇格の立役者に。W杯は10年南ア、14年ブラジル、18年ロシア大会に出場。国際Aマッチ119試合出場、50得点。174センチ、76キロ。