デンマークは延長戦の末にイングランドに1-2で敗れ、優勝した1992年大会以来の決勝進出はならなかった。前半30分にFWデムスゴーのFK弾で先制も、同39分にDFケアーのオウンゴールで失点。後半途中からは消耗もあって防戦一方となった。延長戦では同前半14分にPKを献上し、ケーンのキックをいったんはGKシュマイケルが止めたが、こぼれ球を蹴り込まれた。

ユルマン監督は「決勝に近づきながら、最後の1歩が足りなかった。残念だ」と振り返ると同時に、「選手は素晴らしかった。彼らにはすごい力がある。ファンタスティックなサッカーで攻撃し、ゴールを決め、自分たちらしさを見せてきた。ピッチの中でも外でも持っているすべてを出し尽くしてきた」と、選手の奮闘をたたえた。その上で「みんなで最後まで戦った。今、信じられないほど落胆している」と続けた。

初戦で大黒柱のエリクセンが一時心停止となって搬送されるアクシデントは、国民だけでなくサッカー界全体を揺るがせた。それでも「エリクセンのためにも」という結束力もあって、大会史上初となる1次リーグ2連敗からの決勝トーナメント進出。この日も含め対戦相手は試合前、エリクセンの背番号10の自軍ユニホームにサインなどの寄せ書きをし、主将ケアーに手渡してきた。

1992年大会は、ユーゴスラビアが内戦により出場権を失い、代替出場からの優勝で「おとぎ話」といわれた。今回は頂点にこそ立てなかったが、新たな“物語”だった。

ケアーは言う。「少し引いて見て気づく。すべてを手に入れることは難しかったけど、とてつもなく素晴らしい旅だった。予想以上だ」。そして、「誇りに思うよ。それでも決勝に行けなかったのは残念だ」。最後まで勝利への執念にあふれていた。

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