【バルセロナ(スペイン)1日=益子浩一】「オレにとっては屁でもない」-。セリエAの名門ラツィオへの移籍が破談になった日本代表のMF本田圭佑(25=CSKAモスクワ)が、胸中を激白した。欧州の冬季市場締め切り日となる1月31日夜(日本時間2月1日未明)まで交渉がもつれ、両クラブ間で移籍金の支払い方法が解決されず土壇場で決裂した。一夜明けたこの日、バルセロナ市内で右膝の治療を行った本田は、今後も自らを高めていく決意を語った。

 バルセロナの街は、冷たい雨と霧に包まれた。右膝の治療を終えた本田は、吹っ切れたように笑みを浮かべながら取材に応じた。そこには、迷いも落胆もなかった。トレーニングウエアから普段着に着替えると、しっかりと前を見据えて今後について熱く語った。

 本田

 もうオレ自身の気持ちは切り替わっているんでね。ウインドーが閉まった昨日の夜(1月31日)に、ラツィオの話がなくなった時点で、これからやるべきことは明確になったわけやから。今はCSKAの選手として、しっかりと自分を向上させることしか頭にない。今回(ラツィオ移籍が)破談になったことなんて、オレにとっては屁でもない。

 どこまでも本田らしかった。今年6月には26歳になる。世界の頂点を目指す選手として、決して若くはない。残された時間を逆算し、自分がどう歩むべきか-。それを考えている男には下を向く時間も、悩む時間も無駄でしかない。

 本田

 逆に言えば、これで可能性は広がったとも考えられるから。この先、夏にまたこういう(移籍の)話が出てくるやろうし、その時はもっとたくさんのクラブが注目してくれることだってある。CSKAとの契約期間が短くなるにつれて、欲しいと手を挙げてくれるクラブが増えてくる。オレがここ(CSKA)でやることが、次につながるわけやからね。

 CSKAモスクワとの契約は、あと2年残っている。今回のラツィオ側との交渉は移籍市場締め切り日になって、移籍金1400万ユーロ(約14億円)で両者が歩み寄りを見せながら、支払い方法を巡って決裂した。一方で今後、契約期間が短くなるにつれ「売り時」と考えるCSKA側が移籍金を再考することもあり得る。またはラツィオ以上に資金力のある欧州屈指のビッグクラブが、一気に獲得交渉を進める可能性もある。

 本田

 多少なりともイタリアに(気持ちが)向いていたことは確か。でもオレはこういう世界に生きているわけやから。(市場の)残り1時間まで、何が起きるか分からないような世界。今回はラツィオへの移籍がなかったと思うだけ。でも今後、もっと素晴らしい未来があるかも知れない。いつも言っているように(目指している)スタンスは変わらないし、変えるつもりもない。

 ラツィオは半年後の今夏に、獲得に再チャレンジする意向を持っているという。それに関して、感謝の言葉も口にした。

 本田

 それはプロ選手として、すごくうれしいことです。今までも獲得の話を持ってきてくれたクラブが、後になってまた話をしてくれたこともある。それだけ評価してくれているということは、選手冥利(みょうり)に尽きる。(移籍先の)選択肢も増えるわけやから。

 今は、昨年9月に手術した右膝の治療とリハビリを続けている。まだチーム合流のメドは立っていないが、復帰後の活躍次第で、今夏のビッグクラブ移籍が再燃してくる。世界一を目指す本田の挑戦は、果てしなく続く。(金額は推定)