[ 2014年2月9日9時25分

 紙面から ]現地入り後初飛びを行った高梨(撮影・井上学)

 “前哨戦”は圧勝だった。ノルディックスキー・ジャンプ女子の金メダル候補、高梨沙羅(17=クラレ)が8日、ルスキエゴルキ・センター(HS106メートル、K点95メートル)で現地入り後、初飛びを行った。ケガで今季W杯を欠場していたライバルのサラ・ヘンドリクソン(米国)との13年8月以来、約半年ぶりに相対し、対戦した2回ともに飛距離で圧倒した。11日の本番へ向け、今季W杯13戦10勝で個人総合を独走する女王のプライドを見せた。

 まるで恋人を待つかのように、待ちこがれたライバルとの対戦だった。高梨は現地入り後、初のジャンプ練習で13年8月のサマーGP以来、約半年ぶりにライバルと対峙(たいじ)した。くしくもスタートの順番は今季、ケガでW杯に出場していないヘンドリクソンがトップバッターで、個人総合女王の高梨がトリ。まさに「サラで始まり沙羅で終わる」ような今大会を象徴するかのような順番だ。

 3回の公式練習で対戦は2回目。先に飛んだヘンドリクソンが出場28人で最下位の81・5メートルと飛距離を伸ばせない中、高梨は99・5メートルまで伸ばした。さらに、3回目はサラの78メートルに対し、96・5メートル。ケガ明けのライバルは2回目は35番ゲートで高梨が39番。3回目もサラが2段下だったように単純比較はできないが“前哨戦”を圧勝した。

 しかし、思いはそんなところにはなかった。「憧れの選手が近くにいるだけでモチベーションが上がるし、幸せ。し烈な争いとかそんなことは考えていません」。ヘンドリクソンは「台に合わせるのは時間がかかる」と話した。初代女王を目指す2人の戦いは、幕は上がったばかりだ。

 反省も忘れない。高梨は1回目98メートルで首位だったが、2、3回目はともにイラシュコ(オーストリア)に飛距離で負けた。「台の感覚はつかめたが(助走路で)自分のポジションに乗れていない」と課題を見つけていた。

 前日7日の開会式はテレビで観戦した。「有名な選手を画面で探したりして『ウォーリーを探せ』みたいなことをやって楽しんでいました」と、11日の本番までリラックスしながら調子を整える。指導を続けてきた父寛也さん(46)は「まだ初日だから。徐々に良くなる」と話す。金メダルへの戦いが、ここからスタートする。【松末守司】