[ 2014年2月11日9時20分

 紙面から ]

 金メダルへの1ミリ勝負だ。ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅(17=クラレ)が今日11日(日本時間12日午前2時半開始)、いよいよ五輪初代女王に向けて飛び出す。年明けから助走路でのスピードが思うように出ずに悩んでいたが、その原因がブーツをスキー板に固定する金具のズレにあることが判明。急きょ金具の位置を1ミリずらした板に変更した。この時期の変更はリスクも伴うが、1ミリにこだわって悲願に挑む。

 高梨が9日の公式練習からスキー板を変更していた。五輪直前で使い慣れた板を替えることはリスクを伴う。それでも、金メダルをより確実にするために大きな決断をした。指導する父寛也さん(46)は「飛距離が出ているんで替えなくてもと思うかもしれないが、やれることはやっていきたい。この板で勝負します」と娘に代わって決意を明かした。

 1月11、12日の札幌大会前、スキー板をリニューアルした。当初はその板で本番に臨む予定だったが、W杯札幌大会から、ジャンプ台からの飛び出し速度が、他の選手より時速約0・5~1キロ遅くなっていた。高梨は「違和感はない」と話していたが、調べてみると、スキー板にブーツを固定する右側のビンディングと呼ばれる部分が1ミリだけ内側にずれていたという。そのズレによって、助走路でスキー板がレールにぶつかるなどしてスピードが遅くなっていた。

 W杯札幌大会の終了後に1ミリのズレに気づき、すぐに契約するスキーメーカー「エラン」(スロベニア)に連絡した。ズレを修正して届いた新しいスキー板は寛也さんがソチに持ち込んだ。公式練習2日目の9日から新しい板で飛んだ高梨は、1回目の飛び出し速度が前日より時速0・6キロ上がるなど成果は出ている。寛也さんは「足元で1ミリなら先端までには4センチくらいのずれが出る。もう少し飛べば慣れてもっと上がるし、飛距離につながる」と安堵(あんど)の表情を見せた。

 高梨は今季13戦10勝で金メダル最右翼。ソチでは海外メディアの取材攻勢にさらされる中、冷静に対処して笑顔ものぞかせている。午後9時半開始の試合に合わせて就寝時間を午前4時にするなど抜かりなく準備を整えている。「自分のやるべきことをやれば結果はついてくる」。先輩たちが切り開いた道を引き継いだ152センチの女王が、ソチの空を制し、新たな時代の扉を開く。【松末守司】