[ 2014年2月4日8時38分

 紙面から ]男子500メートルのタイムトライアルでスタートダッシュを決める加藤

 スピードスケート男子500メートル代表の加藤条治(28=日本電産サンキョー)が最後の実戦で金メダルを確信した。3日、五輪本番会場アドレルアリーナで行われた記録会に出場。最終カーブ前から流したため35秒51で22人中11位に終わったが、スタートの感覚、中盤の滑りに手ごたえをつかんだ。銅メダルの前回バンクーバー大会時は直前のスランプで記録会を途中棄権していた。「三度目の正直」へ、準備は整いつつある。

 4年前とはまるで違う。恒例の本番1週間前の記録会。加藤はスタートと中盤までの滑りを確認すると、最終カーブ手前から、スピードを緩めて流した。35秒51と全体11位のタイムも、表情には安堵(あんど)感が広がる。本番用の緑のサングラスを脱ぐと「悪くない。5~6割の状態では良い方」と自らに及第点を与えた。

 この4年間、ピーキングを追求してきた。本番で100%の力が発揮できるようにデータを駆使。大会前の追い込み時期を決め、本番に備える。今回は先月19日まで徹底して体をいじめ抜いた。以来、体には大きな刺激を与えず、1週間後のレース本番の10日に絶好調となるように筋肉の回復を待つ。回復途上の肉体では十分な滑りと判断した。

 4年前は悪夢を味わっている。五輪の数週間前から「スタート・イップス(精神的な原因による運動障害)」のような状態に陥り、今回同様の記録会もスタートに失敗して途中棄権。前回とは真逆の結果に「4年前はスランプだった。今はいい感じだし、大きな心配はない。精神的にも安定している」と心技体の充実ぶりを口にする。

 06年トリノから3大会連続の金メダル候補。過去2大会は、自分の力を発揮できぬまま終えた。記録会後、大会公式サイトのロシア人ボランティアからライバルについて質問されると「優勝できる可能性のある人はたくさんいる。その中でも韓国とオランダは強い」と冷静に分析した。

 本番まであと1週間。自らを冷静に客観視する28歳に、勝利の女神はほほ笑みそうだ。【田口潤】

 ◆前回バンクーバー五輪時の記録会

 今大会と同様、レース1週間前となる10年2月8日に実施。加藤はスタートから数歩でバランスを崩すと、集中力を切らし、第1カーブで自らリタイア。「最悪の結果です」とうなだれた。数週間前から、スタートに不安を抱え「スタート・イップス」のような状態に陥っていた。本番では金メダルを逃し、銅メダルに終わった。