20年東京オリンピック(五輪)をにらんだ夏のレースを制した。男子マラソンで日本歴代4位の自己記録を持つ井上大仁(ひろと、25=MHPS)が、日本勢男子32年ぶりとなる金メダルを獲得した。2位エルアバシ(バーレーン)と同タイム2時間18分22秒で着差勝ちの大激戦だった。

20年東京五輪と代表選考会マラソングランドチャンピオンシップ(MGC、19年9月15日)を見据え、ジャカルタのレースに挑んだ井上は、暑熱対策を施した。

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(1)冷却セット 5キロ毎の給水所にはスペシャルドリンクと別にペットボトルの水を用意。飲むだけでなく、体にかぶったり、手に持ったり「全部使うつもりで」。10キロ以降は保冷剤も用意し、握って体温上昇を防いだ。「序盤は冷やしすぎて、両ふくらはぎがつりかけた」と苦笑い。30キロ以降は、日差し対策用の帽子も追加された。ただ35キロ以降は逆に「暑い」と使用しなかった。一連のセットをプラスチックのケースに入れ、それにワイヤを取り付け、一気に取れるようにした。

(2)ユニホームに穴 胸元、背中、ゼッケンの一部をダイヤ型に切り抜いて、風の通気性をよくした。MHPSの黒木監督は「蒸れないように。お互いが考えていた」と説明した。

趣味は折り紙。器用な手先で冷却セットのワイヤ付けも、ユニホーム加工も自らやった。井上はMGCへ向け「得たことは準備から何もかも。勝ちパターンの引き出しもできた」と収穫を口にした。午前6時号砲時は気温26度、ゴール時は30度。シミュレーションには十分。失敗もあったが、実戦でしか分からない経験を積めた。【上田悠太】