今季世界最高が男子では400メートルと5000メートルの2種目、女子では1マイル、走り高跳び、やり投げの3種目で誕生した。そのうち男子400メートルでウェード・ファンニーケルク(24=南アフリカ)が走った43秒62と、女子走り高跳びのマリヤ・ラシツケネ(24=ロシア。大会には個人資格で出場)が跳んだ2メートル06はダイヤモンドリーグ記録でもあった。

 男子400メートルは期待されていた世界記録こそ出なかったが、ファンニーケルクが予想通りの強さを見せた。300メートルでは外側の7レーンのアイザック・マクワラ(30=ボツワナ)が少し前に出ていたが、ラストの直線で5レーンのファンニーケルクが逆転した。

 今季は100メートル、200メートルでスピードを研いてきた。6月末の300メートルでは30秒81の世界最高もマーク。400メートルは国内大会で足馴らしはしていたが、「ヨーロッパで走る400メートルは今季初戦。そこまでタイムは求めていなかった」という。

 それでも自己3番目の43秒62で走ってしまう。この記録は2010年に発足したダイヤモンドリーグ史上最高タイム。ファンニーケルクのベースが上がっていることを示している。

「ロンドン(世界陸上)の前にもう1試合予定している。そこではグレートな記録をお目にかけられるかもしれない」

 人類初の42秒台も示唆するほど手応えがあった。

 女子走り高跳びでもラシツケネが2メートル06のダイヤモンドリーグ記録で優勝した。2位に13センチ差をつけたが、世界のトップクラスが出場するダイヤモンドリーグでは普通はあり得ない大差だった。昨年まで2メートル01だった自己記録を今季、2メートル03、2メートル04と更新し、今回の圧勝で世界記録(2メートル09)更新の期待も高まった。

 昨年まではクチナ姓で活躍していた。一昨年の北京世界陸上は金メダルを獲得したが、リオ五輪はロシアの国家ぐるみのドーピングが発覚し、出場することができなかった。

「リオ五輪に出られなかったときは、生きていく難しさを感じました。でもそれがアスリートにとってどんなにつらいことでも、失望に打ちのめされても、世界記録への過程に集中し、前に進まないといけません」

 今年は個人資格で国際大会への出場が認められている選手の1人。ロンドン世界陸上では2年分の思いを込めて連続金メダルに挑戦する。

 ◆今季の男子400メートル

 ファンニーケルクがローザンヌで走った43秒62が今季世界最高だが、もう1人、注目されている選手がいる。5月に43秒70と25年ぶりに全米学生記録を更新した22歳のフレッド・カーリー(米国)で、昨年まで45秒台だった選手が世界歴代7位の快記録を出して世界を驚かせた。

 カーリーが一発だけの選手でないことは、全米選手権に44秒03で優勝したことでわかる。国際経験の少なさが懸念されるが、勢いが経験不足を上回れば、ロンドン世界陸上でファンニーケルクの対抗馬になる。