男子400メートル障害のアブデルラーマン・サンバ(22=カタール)が47秒41のアジア新、ダイヤモンドリーグ歴代最高をマークした。また、女子100メートル障害のブリアンナ・マクニール(26=米国)の12秒38など4種目で今季世界最高が誕生する盛況だった。そして男子走り幅跳びのファンミゲル・エチェバリア(19=キューバ)、男子棒高跳びのアルマン・デュプランティス(18=スウェーデン)と、10代2選手の優勝にも会場が沸いた。

 衝撃的だったのは男子走り幅跳び最終跳躍者、エチュバリアの最終試技(6回目)だった。3歩半脚を回転させるシザースの空中動作で9メートル近くに着地。記録は8メートル83が表示され、エチュバリアはスタッフと抱き合って喜んだ。

 追い風2・1メートルで惜しくも参考記録となったが(2・0メートルまで公認)、8メートル80以上は世界記録(8メートル95)保持者のマイク・パウェル(米国)ら4人しか跳んだことのない距離である。追い風参考でも8メートル80以上はパウエルと、20世紀のレジェンドであるカール・ルイス(米国)の2人しかいない。

 エチュバリアは昨年まで8メートル28が自己記録で、世界陸上も予選落ちの選手だった。今年3月の世界室内に8メートル46で優勝して注目を集め、5月のダイヤモンドリーグ・ローマ大会で8メートル53をマークしていた。

「今大会でも8メートル50以上を跳びたいと思っていたけど、ここまで記録が出るとは思っていなかったよ。9メートルはまだ考えられない。9メートルは巨大な壁だから、もっとハードトレーニングを続けないと出せないと思う」

 近年、8メートル50を超えれば好記録と言われる種目。9メートルという数字が選手の口から出たこと自体に価値があった。

 棒高跳びのデュプランティスはただ一人5メートル86をクリアし、5メートル81に終わった昨年の世界陸上金メダリストのサム・ケンドリクス(27=米国)を破った。

「地元観衆が後押ししてくれたし、サムとの勝負が僕に火をつけてくれた。今日はリズムが良かったと思う。8月のヨーロッパ選手権に向けて、今日の勝利が僕に大きな自信を与えてくれた」

 デュプランティスは昨年4月に5メートル90、今年5月に5メートル93とU20世界記録をマーク。シニアでも通用するレベルだがロンドン世界陸上は9位、今年3月の世界室内は7位に終わっていた。ダイヤモンドリーグ初優勝の意味は大きかったようだ。

 今大会ではダイヤモンドリーグ得点対象にならない男子100メートルに出場した桐生祥秀(22=日本生命)は、10秒15のシーズン自己ベストで2位だった。

◆今季の男子走り幅跳び

 ルヴォ・マニョンガ(27=南アフリカ)が5月の上海大会で8メートル56、ローマ大会で8メートル58と今季世界最高を連発してダイヤモンドリーグに2連勝した。エチュバリアはローマ大会で5センチ差の2位だった。

 自己記録も8メートル65のマニョンガが、8メートル53のエチュバリアを上回り、8メートル50以上の試合数もマニョンガの「6」に対しエチュバリアは「2」。現時点ではマニョンガの評価が上になる。

 ストックホルム大会でブレイクしたエチュバリアが勝ち続ければ、2人の評価も逆転する。