ダイヤモンドリーグ実施32種目中16種目の最終戦で、今大会の優勝者が年間チャンピオンに決定する。男子200メートルでは昨年の世界陸上金メダルのラミル・グリエフ(28=トルコ)と、今季“ポスト・ボルト争い”をリードするノア・ライルズ(21=米国)が激突。女子800メートルではカスター・セメンヤ(27=南アフリカ)のタイムとともに、連勝記録も注目されている。

男子200メートルでベテランと新鋭が好勝負を演じそうだ。

ライルズは今季の成長が著しい若手選手。ダイヤモンドリーグ4大会に優勝し、19秒65の今季世界最高を筆頭に19秒6台を3試合で出している。100メートルも9秒88と今季世界2位のタイムで走り、全米選手権を制した。

グリエフはライルズが出ていないダイヤモンドリーグで2勝している。7月のモナコ大会ではライルズに0・34秒差で完敗したが、3週間後のヨーロッパ選手権では19秒76と自己新をマーク。強敵がいなかったとはいえ、2位に0・28秒差で圧勝した。

チューリッヒは過去、好記録が量産されているトラック。好条件なら、歴代でも3人しか出していない19秒50未満のタイムが出る可能性がある。

勝負的にはライルズ優位は変わらないものの、28歳のベテランに再浮上する兆しも感じられる。今大会の結果次第では“ポスト・ボルト争い”の構図にも変化が生じる。

女子800メートルではセメンヤが、2015年9月から続けている連勝を“28”に伸ばす可能性が高い。今季のダイヤモンドリーグ3大会で2位になっているフランシーヌ・ニョンサバ(25=ブルンジ)が打倒セメンヤ候補の一番手だが、ニョンサバが最後にセメンヤに勝ったのは6年前だ。

連勝とともにセメンヤの記録にも注目したい。今季1分54秒25の世界歴代4位までタイムを縮めている。前半はそこまで飛ばさないタイプなので、いきなり1分53秒28の世界記録を更新する可能性は低いが、ゼロとも言い切れないだろう。

女子やり投にはアジア大会に出場する中国2選手がエントリーしている。今季67メートル69のアジア記録をマークした呂会会(29)と、5月に大阪で行われたゴールデングランプリに67メートル12のアジア歴代2位で優勝した劉詩穎(24)だ。

アジア大会の女子やり投げは28日の夜に行われるので、その2日後にチューリッヒでダイヤモンドリーグを戦う強行軍。年間ポイントで、トップの呂に2点差の2位につけているニコラ・オグロドニコワ(28=チェコ)らが迎え撃つ。

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、一昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。昨年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、来年の世界陸上への出場権が得られる。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。