各校のエースが集まる花の2区(23・1キロ)で、順大の塩尻和也(4年)が10人抜きの快走で1時間6分45秒の日本人歴代最高記録を更新した。これまで五輪に出場した名選手が走った区間で、16年リオデジャネイロ五輪男子3000メートル障害代表の実力を発揮。目標とする20年東京五輪へ弾みをつける力走だった。

走り終えた塩尻は安堵(あんど)の表情だった。「ちゃんと走り切れた。あ~よかった」。鶴見中継所でたすきを受け取った時は19位だったが、力強い走りで10人を抜き去り、チームの出遅れを挽回。9位で3区にたすきをつなぎ、チームの最低目標だったシード権獲得圏内とした。順大OBの三代直樹氏が4年時にマークした日本人最高記録を20年ぶりに更新した。

4年間走った花の2区。往路で最も距離が長く、1区のスピードランナーが僅差で飛び込んでくる。序盤の流れを引き寄せたい各校は、ここにエースを配置する。過去に瀬古利彦(早大)、諏訪利成(東海大)らの五輪選手、元マラソン日本記録保持者の藤田敦史(駒大)ら歴代の名選手が走った。

集大成の走りを終え「1番良いタイムを出せて良かった。素直にうれしい」。大会唯一のオリンピアンの意地を見せた。

過去3大会の区間順位は5位、5位、10位。勢いよく走れる持ち味が裏目に出て、後半での失速が課題だった。今季は長門監督とともに「負けないラストスパート」をテーマに掲げた。「前回は最後まで走りきれなかったので」。例年より早い昨年7月から長距離練習を始め、前半で力を出し切ってしまうペース配分を見直した。これまでの反省を生かし、今大会では後半での失速を最小限に抑えるレース展開に持ち込んだ。

陸上界では無名の群馬・伊勢崎清明高の出身。部員が少なく、陸上部だけで駅伝チームを組めなかった時もある。

順大に入学後、当時エースだった3学年上の17年日本選手権男子5000メートル覇者の松枝博輝(富士通)の背中を見て、強くなった。2年時には国際陸連が定めたリオ五輪の参加標準記録を突破していなかったが、他国に出場辞退者が出たため、急きょ出場。結果は予選落ち。世界で戦う意欲が高まった。17年には1万メートルで27分47秒87の好記録を出した。

箱根路で世界と戦える可能性の一端を示し、卒業後は富士通へ。「5000メートルか、10000メートル、3000メートル障害でもどれか出場権を取れれば。リオ五輪は予選落ちだったので、決勝に残ることが目標。力をつけて海外レースでも勝負できるようにしたい」。箱根発ランナーが東京五輪へ向かって羽ばたいていく。【戸田月菜】

◆塩尻和也(しおじり・かずや)1996年(平8)11月8日、群馬・伊勢崎市出身。伊勢崎清明高を経て順大。14年世界ジュニア3000メートル障害9位、同種目で16年リオデジャネイロ五輪代表、18年ジャカルタ・アジア大会銅メダル。趣味はビデオゲーム「アイドルマスターミリオンライブシアターデイズ」。家族は父清さん、母和子さん、姉遥奈さん。170センチ、54キロ。