陸上女子短距離のホープ石堂陽奈(18)が“二刀流”での五輪出場を掲げた。2日、北海道江別市内の立命館慶祥高の卒業式に臨んだ。

女子200メートルで19年総体優勝、100メートルでは2年連続日本選手権決勝進出を果たした逸材は「短距離種目で五輪を狙いたい気持ちはある。ただ何が一番世界に近いかと考えたときに自分のスピードを生かして幅跳びやハードルでも世界と戦えるかも知れない。チャレンジしたい」。4月から進む環太平洋大での多種目挑戦も視野に入れる。

走り抜けた3年間だった。「一番印象に残っている」という総体では1年生で400メートルリレー優勝に貢献し、2年時には100メートルで2位、200メートルを制した。「一緒に五輪を目指して頑張ろうって約束をしてここに入ってきた」。短距離男子の小池祐貴(25=住友電工)を輩出した日裏徹也監督(39)の指導に「必死に厳しい練習についていった」。八雲町から移り住み、姉怜奈さん(北翔大3年)と2人暮らしをしながら競技に打ち込んできた。

2年時ですでに100メートル11秒56(日本高校歴代4位)、200メートル23秒67(同5位)の自己記録を記録。「2種目での高校新」を目指した昨年はコロナ禍で揺れた。「1人で練習をするのはすごくつらかった」。2年秋に負った右足舟状骨の痛みとも戦った昨季は八雲小6年の14年全国小学走り幅跳びで日本一になって以来立ち続けた表彰台の頂点に立てなかった。それでも毎週末片道4時間かけて姉と住む自宅に来てくれた母やコロナ禍でも映像を通して指導をしてくれた日裏監督、一緒に汗を流した仲間の支えに「本当に感謝している」。技術面以上に「応援される選手を目指す」部の精神を学ぶ1年だった。

春からは走り幅跳びで03年世界ユース優勝の品田直宏氏(35=札幌市出身)が監督を務める環太平洋大に進む。同氏は進路に迷う石堂に、4年間の指導計画や、走りの分析と改善方法をまとめた10ページほどの資料を提示。石堂は「そこまで自分を見てくれる先生がいるのか」、信頼感を抱いて進学を決めた。

東京五輪400メートルリレー出場権獲得を目指すプロジェクトメンバーにも選ばれているが、あくまで故障の完治が優先で3月末の代表選考会の参加は見送る予定。ただ「日本選手権で良い走り、記録を出して、代表選手にまた再び戻れるように」と、東京五輪出場の望みも消していない。まだ18歳。24年パリ五輪を念頭に「世界に近い種目で世界を狙いたい」。新たな決意を胸に、学びやを巣立った。【浅水友輝】