陸上の日清食品グループは31日、同日で活動を休止すると発表した。95年の創部以降、全日本実業団対抗駅伝を2度制し、五輪代表も5人輩出した名門だった。昨年にはDeNAもクラブとしての活動をやめ、国際大会を目指す選手と個々にスポンサー契約を結ぶ仕組みにした。継続的な支援のために、企業のスポーツ事業の在り方が少しずつ変わりつつある。“合理的”になった。

少し強引に言えば、あまり知名度の高くない選手を10人、20人と契約するよりも、少数精鋭で超有名選手と大型契約するのがトレンドになっている。「分散型」から「集中型」になりつつある。

日清食品グループの場合もそうだ。今回の活動休止の理由については「発足当時とはさまざまな環境が変化しており、企業スポーツの在り方について多面的に検討した結果」としている。陸上からは撤退したが、テニスの錦織圭、大坂なおみ、バスケットボールの八村塁。誰でも知っているようなビッグネームとの契約は残している。

特に陸上の長距離は、採算面から見れば、すべてと言っていいチームが見合わない状況にいる。大勢の選手、スタッフを抱え、海外を含めた合宿も多く、出費は多い。その中で多くの企業が支援を続けてきたのは、もちろん節税対策もあるのだが、スポーツを通じた宣伝活動、社内高揚などの意味が大きい。業績のいい会社は、枠を広げて、それが高校や大学を卒業した選手の「受け口」となり、競技の発展を支えてきた。

ただ、企業には多くの一般社員がいる。善意だけではスポーツを継続的に支えられない。社会情勢が変わる中、経営判断も迫られる。スポーツに大金を費やすならば、より効率的に、会社の名を広めてくれるのはビッグネーム。錦織、大坂、八村といった絶大な影響力を持った選手とピンポイントに契約した方がいいとも考えるのは自然だ。

クラブという形態を辞め、多くの選手が移籍したDeNAも唯一、18年ジャカルタ・アジア大会男子1500メートル代表の館沢亨次とは契約を結んでいる。また短距離にも目を向ければ、日本生命とセイコーにも陸上部はない。しかし、日本生命には前100メートル日本記録保持者の桐生祥秀、セイコーには男子100メートル自己記録10秒00の山県亮太、女子100、200メートル日本記録保持者の福島千里と、まさに厳選された超トップ選手が所属している。

ある関係者は「コロナ禍もある。大きい会社も苦しいところも多い。持続してスポーツを支援していくためには、その少しずつ形が変わってくるのではないか。実業団に入る選手の受け皿が狭くなっていく可能性もある。また東京五輪が終われば、その流れは加速するかもしれない」と話した。【上田悠太】