16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)代表の矢沢航(30=デサント)が、現役引退を表明した。決勝で追い風1・1メートルの条件下で、13秒83を出して7位だった。

最後のレースを終えて「案外すっきりしている。もう少し特別な思いになるかと思ったが、始まると横の選手に勝ちたいと。特に終わりだなと思わずに、いつも通りレースが終わった」と話した。

引退の経緯について「2013年にインカレの時に2020年東京が決まって。ぼんやりと29歳か、そこで区切りをつけられたらと思っていた。1年延期になりましたが、これ以上ない冬季練習を過ごした。東京五輪はだめだったけど、自分の中で心が決まった。次の道に進みたい」とした。今後は所属先のデサントで社業に専念。陸上に携わる仕事で「駅伝シーズンは現場にいると思います」と笑って言った。

矢沢は、16年6月の布勢スプリントで13秒47をマーク。同種目で日本勢2大会ぶりの五輪に出陣した。

そのリオ五輪では珍しい再レースを経験した。予選1組に登場して13秒89で6着。一時は予選敗退となったが、2組目終了時に激しい雨で中断が入った。全5組が終わった段階で「中断の前後で条件が違いすぎる」と抗議した国があり、1、2組の5~8着の選手がタイム順で準決勝に進む4枠を目指し再びレースをすることになった。「終わって放心状態の時に連絡があった。複雑な気持ちだった」。再レースでは13秒88とタイムを上げたが、4枠に入れず予選敗退となった。

矢沢の後輩で、ともに練習を重ねた金井が先頭を切って、現在の110メートル障害は世界と戦える種目と目されるようになった。矢沢は「ひとつ力になれていたならうれしい。これからの選手は、僕らが到達できない場所にいってほしい。常識にとらわれない練習で、ぶっ飛んだ選手が出てきてほしい」と期待していた。