女子1万メートルで日本歴代2位の記録を持つ拓大のスーパー1年生「陸上界のフワちゃん」こと、不破聖衣来(せいら、18)が21年の年の瀬にまたも衝撃的な走りを披露した。

【写真特集】「フワちゃん祭り」拓大スーパー1年生不破聖衣来10人抜き>

最長距離の5区(10・5キロ)で10人抜きするケタ違いのスピードを披露し、従来の記録を1分54秒も短縮する32分23秒の区間新記録。3年後のパリ五輪を目指す新星が、圧倒的な存在感を見せつけた。

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師走の富士で、不破の「異次元走り」が飛び出した。トップの名城大から2分22秒差の12番目。最初の1キロを2分59秒と、154センチの小柄な体がスイスイと前を追う。日本インカレ1万メートル覇者の大東文化大・鈴木優花も歯が立たない。4キロまでに9人、7キロで10人を抜いた。

終盤もフォームは崩れない。「息をしていない」とまで言われる美しい走り。トップとの差を1分17秒にまで詰めたところでタスキを次に託した。32分23秒の区間新記録。それでも「前を追うことだけ考えた。トップになる目標を持っていたので、それができなくて悔しい」と言ってのけた。

12月10日の記録会で1万メートルを日本歴代2位の30分45秒21(U20世界歴代5位)で走破し、来年夏の世界選手権(米オレゴン州ユージン)の参加標準記録(31分25秒00)も突破した。それからわずか3週間。沖縄合宿で疲労回復に努め、練習らしい練習はしていない。五十嵐利治監督は「羽が見える。富士山まで飛ぶんじゃないかと思った」とユーモアを交えて話した。

群馬・高崎健康福祉大高崎高時代はケガに加え、3年時はコロナ禍で全国大会もなかった。おかげで今季新星のごとく現れると、芸能界で今をときめく「フワちゃん」になぞらえ「陸上界のフワちゃん」としてブレーク。大学に入り2度の貧血で走れない時期を経験し、食事を見直した。お米の食べる量を増やし、体づくりに努めると競技力も好転した。

狙うは1万メートルでの24年パリ五輪出場。その先にはマラソンでの金メダルという夢も描く。レース後、00年シドニー五輪金の高橋尚子さんから期待の言葉をかけられた。「すごい方に褒めていただけるのは刺激になります。頑張ろうと思いました」。世界一という途方もない夢へ歩み出した。【佐藤隆志】