パリへ、新星誕生か。初マラソンの西山雄介(27=トヨタ自動車)が2時間7分47秒の大会新で優勝した。強い海風が吹き付ける厳しい条件下、40キロ過ぎから3人のデッドヒートを制した。これまで無名の存在が7月に米オレゴンで行われる世界選手権の派遣標準記録(2時間7分53秒)をクリアした。1~6位が24年パリ五輪代表選考会「グランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を得た。

大会新で初マラソンを制した快挙でも、西山は悔しさをにじませた。「優勝できたのはうれしく思うが、初マラソンの歴代最高(2時間7分42秒)を目指していたので、5秒足らずは残念な気持ちです」。強い向上心をにじませた。

激しい戦いだった。35キロの折り返しから向かい風になる。古賀が抜け出したが、西山は「少しずつ追いついていこう」とあせらない。鎧坂と追走し、40キロ付近で追いつくと最後に抜け出した。初マラソンとは思えない計画的な走りだった。

駒大では2年時に箱根駅伝で7区2位などあるが、全国的には無名。西山には綿密なプランがあった。「(トヨタ自動車に)入社して5年目か1万メートルで27分台を出した翌年にマラソンへいこうと。たまたまその2つが重なった」。5年計画に加え、気持ちの面では東京五輪に向けた19年MGC。1、2位となった駒大の先輩・中村匠吾(富士通)、会社の先輩・服部勇馬の走りを見て「この舞台で戦いたい」と心に誓った。

あくまで通過点だ。「うれしさよりもっと上を、世界を目指したい気持ちが強い」。過酷な勝負を制し、世界への扉が開いた。【実藤健一】

◆西山雄介(にしやま・ゆうすけ)1994年(平6)11月7日、三重・松阪市生まれ。伊賀白鳳高では全国高校駅伝で1区の区間賞。駒大でも箱根など駅伝で1年時から主力を担う。トヨタ自動車でも全日本実業団駅伝で区間賞など活躍。173センチ、58キロ。